パフォーマンス理論 その11 休み方について
Japan In-depth / 2019年7月6日 7時0分
余談になるが、ラットの実験でドーピングを行い120%の力が出せるようになったあと、ドーピングをやめて一定期間過ぎ、成分が抜けたところで、再びトレーニングを開始してもまた120%の力が出せるようになるというものがある。高度なレベルでは安定に関しては問題なく、むしろこの安定を壊し、限界を一歩超えた世界を自分に体験させることに意識が向けられるようになる。体験さえすれば再現できるようになるからだ。
もちろんこれは陸上の例であり、負荷が小さい水の中や、演技系の競技は、休みに対しても違う捉え方になる可能性は十分ある。
では具体的に休み方はどうすればいいのか。私もそうだったが日本に多いのは休むこと自体に罪悪感を感じるタイプで、このような選手はどう休むかの前に休むこと自体への抵抗感を減らさなければならない。外から練習熱心に見えている選手でも、競技力が向上するから練習を継続しているのではなく、休んでしまうことが恐ろしいから練習をしているだけの場合がある。こういう選手は努力家というより休む勇気がないというのに近く、人生で一度も休んだことがないからただ休んでいないだけだ。まず休んでも大して実力は落ちないということを自分に納得させ恐怖感を取り除いていく必要がある。私はそれほど休みが少ない選手ではなかったが、数日まとめて休む時にはやはり不安だった。それでも、まずはやってみて練習に復帰しそれでも大してタイムが変わらないことを知って少しずつ不安が取り除かれていった。一旦それがわかれば、あとは少しずつ広げ、そして頻度を上げていく。時に休みすぎて実力が低下することもあるかもしれないが、その時には戻せばいいだけというぐらいの楽観的な気持ちで構わない。
また日本のような社会の中で自分を位置付ける文化においては、他者に気を使って休めないことが多くなりがちだ。チームに気を使って休めない場合もある。実際にきちんと休む人間は、疎まれることもあるが、もしトップを目指したいなら全く意に介さず休む勇気を持つべきだ。コーチが休むことを認めない場合もあるが、理想はこのようなコーチとは縁を切るか無視できるなら無視した方がいい。もしそれが難しければ、うまく距離を取りサボる方法を見つけるしかない。ともかく選手にとっては結果が全てで、結果さえ出れば全ては美談に変わる。そして結果のために休むことは必須だと私は思う。
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