パフォーマンス理論 その11 休み方について
Japan In-depth / 2019年7月6日 7時0分
以下は私の現役時代(24-28歳)の3-6月の代表的な練習メニューになる。
月-休み
火-SD20×2 30×4 50×2
水- 350 250
木-休み
金-
土-SD20×2 30×4 50×2
日-450 350
※SDはスタートダッシュの略
疲れていればSDはやらなかったので、ほぼ週に二日の刺激のためにメニューを組んでいた。これでも、春先は肉離れなどを起こしていたので、週に一回に減らしたりしていた。若いときはもっと詰めて練習をしていたが、26歳ごろから練習ではたくさん走れても試合で一発の力が出ないと感じるようになり、練習メニューをシンプルに変えていった。週の走行距離は昔の3分の1ほどになったと思う。
また具体的には冬季トレーニングの間は四週間をひとかたまりにとらえ、そのうち一週間は休む週として考えていた。週の中でもリズムを作るが、1ヶ月単位でも、それから一年単位でもリズムを作っていた。やるときとやらないときをはっきりさせ、そのリズムがうまくはまっているときは例外なく試合でも走れていた。私の中ではいいトレーニングメニューはストーリーが感じられたという印象がある。
また23歳以降、毎年9月の最後の試合を終えたら1ヶ月ほぼ全く練習をしない期間を設けていた。最初にやった時には勇気が必要だったが、復帰して2,3週間すると元に戻るのを経験して、徐々に休めるようになっていった。この長期の休みの1番のメリットは一定期間競技から離れることで、自分の姿が客観的に見えて、何をやればいいかがシンプルに考えられるようになったことだ。将棋でも囲碁でも、周りで見ている方が打っている本人よりも大局的な視点を持つことがある。人間はそれをやり続けると細部に入り込んでいき大局観を失うことがあるので、コーチのいない私にとってはこの1ヶ月間が頭の整理と来年度の戦略を考えるいい機会だった。
繰り返しになるが、陸上競技の勝負はある瞬間にどれだけのパフォーマンスを発揮するかに尽きる。休めない人間はそれが競技力向上にいいと思っているのではなく、休まない状態の方が頑張っている感じがして落ち着くのだと思う。休養は準備である。混乱した状態を沈め、目的に集中させ、意欲を高めるために必要な作業だと思う。シンプルに考えれば陸上競技はたった数度の試技で歴史に名前が残せる。その瞬間に力を出し切れるための準備には休養の技術が不可欠だと私は思う。
トップ写真)Pixabay Photo by StockSnap
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