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パフォーマンス理論 その14 量と質について

Japan In-depth / 2019年7月9日 7時0分

また競技人生のピークをいつ捉えるかで違ってくる。例えば世界に近づくようなトップを目指すのであれば、23歳-30歳あたりでパフォーマンスのピークを迎えることがよい結果とされる。10歳で始めたとしても10-20年かけてのばしていく必要がある。一方で高校で引退する選手は18歳までだから、数年でそれなりのピークに至る必要がある。


若い時は技術が未熟なので質をあげようと思ってもあげきれない。例えばとにかく本気で100kgの重さでスクワットをしてくださいと言っても最初は持ち上げられない。繰り返せばそれが上がるようになるが、その理由は筋力がつくことと、ちゃんとフォームができ神経伝達できるようになるから力に入るようになったということもある。車で言えばエンジンを大きくする側面と、その限界に近づけるようになる効率性の両方をトレーニングで鍛えている。一秒単位でどの程度力を出し切れるかが質の高さを決める。質が高ければ時間単位の負荷は強くなる。


高校生が元気だからたくさん練習できるとよく言われるが、一回で負荷が小さいこともあげられる。そういった高校生を短期間で強くしようと思えばどうしても量に頼らざるを得なくなる。だから高校生でピークを迎えさせようとすれば、量が質よりも大事ということになる。


一方で26,7歳をピークにする場合、技術が成熟してきて出力が出せるようになっている。そうなると、今度は高校生の頃のたくさん走る癖が弊害となる。つまり時間当たりでの負荷を高め、質を上げなければならない競技人生後半に量で追い込む癖が抜けきれず伸び止まる。私は日本の高校生が世界では通用するのにシニアになって通用しにくくなるのは、インターハイなどを目指す際に量で伸びる癖が選手についてしまいそれから脱却的できないことの影響だと考えている。また量を走れば、関節が磨耗して、引退が早まる。私も20代前半に相当走ったが、あれをしていなければもう少し現役が伸ばせたし、今も左膝の痛みを避けるために階段を斜めに降りなくて良くなっている可能性がある。仮に競技人生が5,6年程度であれば走りまくっても問題はないと思うが、10年以上走ろうと思うなら競技人生前半でそれなりに量をセーブしておく必要がある。


量の最大の効果は均質化だろう。何度も何度も繰り返せば精度が高まり均質化が起きる。例えばお手本を見ながら何度も字を書くことを繰り返せば誰でもそれなりに精度は上がる。陸上であれば技術の精度を高めるために反復を続ければ効果がある。一方で、量の最大の弊害も均質化だ。何度も何度も繰り返すことで鍛えれば、何度も何度も繰り返すことに適応してしまう。今から1本50mを全力で走るという時と、今から50本50mを全力で走る時では一本目のダッシュはやはり躊躇する。どんなに根性があっても人は経験を積めばバランスをとって抑制をかけるようになる。ところが陸上競技の試合はたった一発だから、調整しながら何度も力を出せる選手よりは、一度に力を出し切れる選手の方が有利となる。


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