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レーダで敗北 日本護衛船団

Japan In-depth / 2019年7月6日 22時36分

先回りは容易である。日本船団の速力は通常8kt、15km/h程度である。しかも針路も把握されている。米潜水艦は水上20kt、36km/hの優速で大回りに追い抜けられた。


結果、日本船団は全滅まで再攻撃を受けた。好例はUSSシャークによる三五三〇船団攻撃である。1隻撃沈後に先回りで2隻を沈め、その上で3回目の先回りが試みられたのだ。


これは日本船が潜水艦を恐れた理由でもあった。「空襲は15分で終わる。だが潜水艦攻撃は一晩中続く。翌日も続く」と言われた。



▲図


 


■ 相乗効果


以上が日本船団全滅の原因である。


なおこれらの効果は相乗する。レーダによる攻撃機会の拡大、集団戦術による交戦数の増大、再攻撃による襲撃機会の増大は互いに乗数効果で増加するのだ。


比喩的に述べれば次のようになる。レーダ登場以前には年間に100攻撃しか実施できなかった。それがレーダ捜索で2倍の200攻撃が可能となる。また集団戦法で攻撃数はさらに倍の400攻撃となる。その上、再攻撃の繰り返しで攻撃数は3倍の1200攻撃となる。「ゆで理論」を借りて示せばそうなる。


対潜技術の遅れ以前の話だったのだ。


仮に日本護衛艦に英米対潜技術があっても負けた。国産ヘッジホッグで潜水艦を実戦果の2倍、40隻を沈めたとしよう。それでも状況は変わらない。対日戦に投入された米潜水艦は250隻である。事故含めて喪失50隻で日本船478万トンを沈めた。その損失数が70隻に増えるだけだ。大勢は変わらない。


逆に早期にレーダが普及していれば被害は軽減された。米潜水艦は日本護衛艦に発見されれば即座に潜航する。水上砲戦では勝てない。つまり護衛船団の近くでは浮上できなくなるのだ。そうすれば米潜水艦攻撃の相乗効果の発揮は防止された。浮上レーダ捜索も浮上通信も浮上先回りもできないからだ。


 


(*1) 決戦敗北、本土空襲、機雷封鎖、原爆投下も含めて各地での敗北もすべて船団護衛失敗の結果である。いずれの敗北も日本戦争経済の太宗である海上輸送困難に起因するためだ。


① まず、航空戦力整備が滞った。海上輸送困難により日本軍用機製造は停滞し、訓練や実戦投入に必要な航空燃料の入手も難しくなった。


② また、艦隊戦力整備も停止した。海上輸送困難を改善するため商船建造や護衛艦建造に力を注いだ結果、巡洋艦以上の建造が不可能となった。


③ そして陸海軍の決戦敗北の原因ともなった。直接的には海上輸送困難による作戦輸送力の減退、間接的には①の航空戦力の不足による航空敗戦、そして②の艦隊戦力の不足を加えた艦隊決戦不利の結果、最終的にマリアナ・比島決戦の敗北に至った。


そしてマリアナが取られなければ本土の本格空襲、機雷封鎖、原爆投下はない。また「マリアナが取られれば負け」は戦前や戦時中でもコンセンサスであった。


(*2)最近では「日本商船暗号が解読されたから負けた」も加えて説明される。ただベースは「潜水艦を沈められなかったために敗れた」である



尚、日本船団護衛と米潜水艦のレーダの関係については詳しくは以下の筆者記事参照:


文谷数重「なぜ対潜戦は失敗したのか!? --日本船団壊滅の理由」『丸』2018年6月号、通算866号(光人社,東京,2018)pp.119-127.



トップ写真:USSワーフーの攻撃により沈む日通丸。太平洋戦争では日本商船団は米潜水艦により沈没478万トンの損害を受け壊滅した。出典:米海軍


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