ベルファスト合意成る、しかし 悲劇の島アイルランド その6
Japan In-depth / 2019年7月11日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・IRAが過激になるきっかけは「血の日曜日」事件。
・サッチャー政権のIRA討伐がその過激さにさらに拍車。
・サッチャー政権の「力の解決」という路線は、程なく破綻。
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IRAによる反英テロについてはすでに見てきたが、実は私自身、ロンドンで結構きわどい目にあったことがある。
1992年4月、英国の総選挙を取材すべく、駆け回っていた時のことだ。マーガレット・サッチャーはこの前年に辞任し、後継者となったジョン・メージャーの人気がいまひとつであったことから、野党であった労働党が政権奪回に成功するのでは、と見る向きが多く、政権交代の瞬間に立ち会えるかも知れない、と期待したものである。
同じ事を考えたのが、かの田原総一朗氏で、当時フリーになって間もない私は、『週刊ポスト』からの依頼で田原氏の取材をアシストする、といった役回りであった。
忙中閑ありで、ちょっと時間ができた時に、田原氏が、「折角だから、シティというところをこの目で見たいな」と言い出した。そこで、氏に同行してきた編集者を加えた3人で、証券取引所の近くにタクシーを乗り付け、付近を散策した。
翌日、ちょうど我々が車を降りて歩き出したあたりで、ドッカーン。
……このエピソードは、私の最初の単行本となった『英国ありのまま』(中央公論社・電子版はアドレナライズより配信中)でも取り上げた。単行本では日本の「高名なジャーナリスト」としておいたが。田原氏が中公文庫版の解説を引き受けて下さり、これは自分のことだ、と明記していただいたので、本稿では実名にさせていただいた。
幸いなことに、在英日本人がテロに巻き込まれたということはなかったのだが、シティ以外にも有名なデパート「ハロッズ」が狙われたこともあったし、いつなにがあっても不思議ではない状況だったのである。
前回述べたように、IRAは最初からテロ集団だったわけではない。しかし、独立運動が過酷な弾圧にさらされる中、平和的なデモや抗議運動だけでは埒が明かない、とする過激派が台頭し、ついには組織の主導権を握ったのだ。
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