双務の防衛こそが日本を守る 集団的自衛権の禁止とは 6(最終回)
Japan In-depth / 2019年7月11日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・オバマ政権下でも日本の集団的自衛権の解禁が望まれていた。
・世界的な軍事脅威の広がりに、集団的自衛権は必須。
・集団的自衛権は日本を守るための防衛の重要課題。
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アメリカのオバマ政権は安全保障にはそう熱心ではないという印象が強かった。バラク・オバマ氏自身が上院議員時代から軍事には忌避に近い態度を一貫してとっていた。大統領になってからも国防費を大幅に削る措置をとった。だから日米同盟の強化にもそれほど関心がないように思われた時期があった。
ところが現実は異なっていた。日本に集団的自衛権の解禁を望むというアメリカ側の基本姿勢は2009年1月からのオバマ政権になっても変わらなかったのだ。かえってアメリカ政府の国防予算の削減により日本の防衛貢献増大への期待が高まるという展開ともなった。その結果、日本への集団的自衛権の解禁の求めも、むしろ強くなったといえるのである。
オバマ政権下の2010年7月、アメリカ議会調査局が出した日米防衛協力についての報告書はその象徴例だった。連邦議会の上下両院議員たちの議案審議用に多様なテーマを調査し、参考のための報告書を作成することがこの議会調査局の任務である。だからその報告の内容はいつも超党派、中立な記述がほとんどとなる。
▲写真 バラク・オバマ氏 出典:Barack Obama Presidential Library
この報告書は「日米関係=アメリカ議会にとっての諸課題」と題されていた。この報告書が、日米防衛関係のより緊密な協力のためには日本側の集団的自衛権の行使禁止が障害になると明記していたのである。
具体的には以下のような記述だった。
「第9条の制約=アメリカが起草した日本の憲法は日本が集団的自衛にかかわることを禁止するという第9条の現行の解釈のために、日米両国間のより緊密な防衛協力の障害となっている」
議会調査局がここまで断言するということは、その見解がアメリカの議会でコンセンサスとして受け入れられているという証左だといえた。
だからアメリカ側は国政レベルでは、日米同盟をより堅固にするには日本側に集団的自衛権の行使解禁を求め、日本側としてはそのためにいまの憲法解釈を変えるか、あるいは第9条自体を変えるべきだと考えるようになったということだった。その具体的な目的は日米同盟での日本側のアメリカへの直接の防衛協力、つまり集団的自衛権の行使を可能にすることである。いまのままではもう日米同盟の強化は得られないという米側の認識の反映でもあろう。
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