コマツ、装甲車輌開発から撤退
Japan In-depth / 2019年7月23日 12時13分
軽装甲機動車は近年の排気ガス規制によって改良が必用となり、防衛省はコマツに対して改良を発注し、28年度予算では改良型6輌が3億円で要求された。単価はそれまでの約3千~3.5万円から5千万円、約1.5倍に高騰した。
このため財務省が難色を示して政府予算に計上されなかった。そもそもこの手の小型4輪装甲車の国際相場は1千万円程度である。財務省が激怒したのも、むべなるかな、である。コマツ、防衛装備庁、陸幕防衛部の認識が甘すぎたとしか言いようがない。
その後エンジンをカミンス社のエンジンに換装するなどしてコスト削減を図るなどの案も検討されたが採用されなかった。またコマツは自社ベンチャーで軽装甲機動車6輪型も開発していたが、これまた陸自には採用されなかった。
更に現用の陸自の96式装甲車の後継となるべき8輪装甲車、「装輪装甲車(改)」の調達も頓挫した。これは三菱重工との競作となったが、コマツが試作を受注したものだった。
▲写真 8輪装甲車(改) 出典:防衛装備庁
小松案はNBC偵察をベースに開発されたものだった。だが防衛省は昨年7月27日、「装輪装甲車(改)」の開発事業の中止を発表した。コマツが、同省の求める耐弾性能を満たす車輌を作れなかったためとされている。しかし関係者によると機動力など含めてかなり問題があったようだ。
「装輪装甲車(改)」および軽装甲機動車の改良型の不採用が重なり、コマツの装甲車輌の売上は激減、今後コマツは装甲車輌の生産ラインの維持できる見込みがなくなった。
なお陸自は軽装甲機動車と高機動車を統合した後継車種の調達を計画している。これに対してもコマツは応じる気はなく、三菱重工やトヨタなどが興味を示している。
今後コマツが唯一生産を続けるのは先述のNBC偵察車のみである。NBC偵察車はこれまで20輌ほどが調達されたがこれも実は防弾性能に問題があり、また高額である。
これは陸幕にも問題がある。前線で使わない車輌なので、防弾性能は必要なく装甲はあくまでNBCシステムで車体を加圧するためのもだという認識が要求側にあったからだ。NBC偵察車は今後調達されるのは最大でも30輌程度、実際には20輌も調達されないだろう。これまで平均年に2~3輌の調達に過ぎない。このペースであればこれまでの規模のラインは当然維持できず、工芸レベル、町工場レベルの生産となる。これではこれまでの生産ラインを維持できない。恐らくコマツは生産数を上げて短期で生産を切り上げるように防衛省に依頼するのではないだろうか。
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