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コマツ、装甲車輌開発から撤退

Japan In-depth / 2019年7月23日 12時13分

コマツは榴弾砲などの精密誘導砲弾の研究を行っていたが、これを中止した。現在陸上自衛隊は榴弾砲、迫撃砲に精密誘導砲弾を導入していないが、将来これらを導入することになるだろう。人民解放軍や途上国ですら導入しているからだ。


そうなれば当然、精密誘導砲弾は輸入品になる。しかもこれらは通常砲弾の数倍の値段なので、国内の通常弾薬の調達予算は更に減ることになり、当然コマツの弾薬ビジネスの売上は減少するだろう。そうなれば弾薬の製造ラインの維持は極めて困難だ。また近年財務省は国内の弾薬メーカーの数が多すぎて、調達コストが高いと批判しており、弾薬メーカーの再編を提案している。これらのことからコマツは近い将来、防衛産業から完全に撤退する可能性が高い。


次期防衛大綱は次のように述べている。


「少量多種生産による高コスト化、国際競争力の不足等の課題を克服し、変化する安全保障環境に的確に対応できるよう、産業基盤を強靭化する必要がある」


また、中期防衛力整備計画には以下のようにある。


「国内調達の費用対効果が低い装備品について、輸入における価格低減の検討、国内向け独自仕様の縮小等の検討により、国内外の企業間競争の促進を図る」


だが防衛産業はこれまで大きな利益を得てきたはずだ。少なくとも国際価格の何倍も高い調達単価の装備を税金で支払ってもらってきた。コマツのように業績が順調で、防衛依存率の低い大企業、特に上場企業は株主のみならず国や納税者に迷惑がかからない形での撤退をするように努力すべきで、それが社会に対する企業の責任だろう。


しかしコマツにはその気がないようだ。コマツは特機(防衛)部門を恥ずかしい事業と考えていたようだ。自社のサイトにも特機事業は紹介せず、歴代社長は特機部門の朝礼でスキャンダルだけは起こしてくれるなと訓令してきた。


これまでコマツが蓄積した装甲車輌技術や人材は同社が開発してきたハイブリッド駆動システムなどの技術も含めて霧消するだろう。それはコマツの経営陣の当事者意識の欠如と問題先送りの責任逃れの成れの果ての姿だ。名経営者と謳われた坂根正弘元会長もその一人だ。


多額の税金を投じて蓄積された防衛技術基盤が無責任に失われていく。


装甲車両に関してはもっと早い段階から打てる手はあったはずだ。例えば三菱重工、日立あたりと事業統合、事業を売却するなど選択はあった。だが歴代のコマツの経営陣はそれを行わず前例踏襲を繰り返し、現状維持に固執して、茹でガエル状態となって両手を上げてしまった。


恐らくは同社の弾薬ビジネスも近い将来同じ道をたどるだろう。これは官の側の指導力にも問題がある。防衛省、経産省ともに防衛産業をどうするかというグランドデザインがなく、当事者意識も能力も欠けている。やる気がなく、将来長年に渡って多額の税金を使って蓄積した防衛技術基盤を安易に放棄するような防衛関連企業による国内調達は早めにやめて輸入に切り替えるか、やる気のある国内中小企業に切り替えるべきだ。既存の防衛関連企業を守ることだけが、国内防衛基盤の維持ではない。


トップ写真:82式指揮通信車 出典:Flickr;JGSDF


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