意外な「日仏関係史」 今さら聞けないブレグジット その4
Japan In-depth / 2019年7月30日 8時57分
▲写真 シャルル・ド・ゴール第18代仏大統領(1961年5月20日)出典:Wikimedia Commons; ドイツ連邦公文書館
1960年5月1日、ソ連領上空を偵察飛行中だった、米軍のロッキードU2偵察機が、地対空ミサイルで撃墜され、パイロットはからくも緊急脱出に成功したものの、パラシュートで地上に降下したところを逮捕される、という事件が起きた。彼が、「自分の任務はスパイ行為であった」と自白したことから,ソ連側も態度を硬化させ、「この次に領空侵犯・スパイ行為があった場合は、こうした航空機の出撃基地を攻撃することも辞さない」と恫喝を加えてきたのである。
これが、日本を震撼させた。神奈川県の厚木基地が、ソ連から一番近い出撃基地で、問題の機体も一時は厚木基地所属だったのだ。このため日本国内では、在日米軍基地の存在が、かえって日本の安全を危うくするのではないかという「安保巻き込まれ論」が力を持ち、とうとう米軍は、日本国内の基地からU2を撤退させてしまう。
▲写真 撃墜したU2機の残骸を視察するニキータ・フルシチョフ書記長(1960年)出典:Wikimedia Commons; Public Domain
これに続いて、1962年に起きたキューバ危機でも、戦争の危機は回避された。キューバ危機について言えば、当時の米政府高官らの口から、「本当に全面核戦争の一歩手前だった」という証言が複数残されているので、早計には言われないことだが、いずれもド・ゴールの目には「冷戦の仮想性」を証拠立てるものであると映ったらしい。
ひらたく言えば、米ソは互いにハッタリをかましあっているだけで、本気で互いの存亡をかけた戦争など、やるつもりはないに違いない、というわけだ。この発想に立つならば、ヨーロッパ統合という政治的な動きも、要は米国の世界戦略、具体的には「共産主義に対する防波堤は堅持したいが、そのための軍事的・経済的負担は軽減したい」という、ある意味で矛盾した政治的要求を満たすためのものではないか。ジャン・モネらはその動きに乗せられているだけではないかーーこのように考えられるではないか。
最終的に彼は、「統合されたヨーロッパなど、フランスのため、フランス人のためにならない」と言ってはばからないようになった。つまりは「フランス・ファースト」の政策を掲げて、ヨーロッパ統合の動きに反旗を翻したド・ゴールだったが、そんな彼に、他ならぬフランス国民が「ノン」を突きつけた。
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