フィリピンに新たなテロ組織
Japan In-depth / 2019年8月19日 12時2分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・ルソン島北部でイスラム国に忠誠誓う新テロ組織の活動を確認。
・中東でほぼ壊滅のISによるフィリピン拠点化の見方裏付け。
・ドゥテルテ大統領は戒厳令の地域拡大も視野に対テロ作戦。
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フィリピンで国軍が厳戒態勢を取っていることが明らかになった。地元メディアなどが伝えたものでフィリピンのイスラム系過激組織で中東のテロ組織「イスラム国(IS)」に忠誠を誓う一派が、フィリピン国内のキリスト教会を狙ったテロを計画している、との情報が流れているためで、イスラム系組織の主要活動拠点であるフィリピン南部に加えて首都マニラのあるルソン島の北部でも車両や通行人の検問や所持品検査などが実施され警戒を強めている。
東南アジアの人権関連ニュースを発信しているネット・メディアの「ブナ―ル・ニュース」が8月6日にフィリピンの情報機関による情報として伝えたところによると、「ルソンのカリフ制国家の兵士」を意味する「スユフル・カリファット・フィ・ルソン(SKFL)」と称する新たな組織がルソン島北部で活動していることを確認したという。
SKFLはその存在自体があまり知られていない新グループとみられ、キリスト教徒からイスラム教徒への転向者で構成された「ラジャ・ソライマン運動(RSM)」から移籍したメンバーが中心となっていると情報当局は分析している。RSMはかつてのイスラム教テロ組織「アルカイダ」と関係があった組織とされ、フィリピン軍などによる掃討作戦でその指導者とされる人物が殺害され、組織は壊滅に追い込まれた、とみられていた。
ところがその後、そのRSMの残党を再結集する形でSKFLが新たに組織されて活動を開始している模様で、ルソン島北部でテロ攻撃を準備しているとの情報が流れているのをキャッチしたという。
■ テロ攻撃目標はキリスト教教会などか
フィリピン軍や情報機関からの情報を総合するとSKFLがテロ攻撃の標的として狙っているのは北部ルソン島の公共施設とキリスト教教会施設という。
フィリピンでは1月27日に南部スールー州の州都ホロでキリスト教会を狙った爆弾テロが発生し、23人が死亡する事件が起きている。この事件の自爆テロ犯はインドネシア人夫妻とされ、インドネシアからフィリピンに不法入国した後、ISと関係がありミンダナオ島の南ラナオ州・マラウィ市を武装占拠してフィリピン軍と戦闘を続けた「マウテグループ」の後継指導者と連絡を取っていたという。
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