首脳宣言なし、前代未聞のG7
Japan In-depth / 2019年8月27日 11時18分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2019#35」
2019年8月26日-9月1日
【まとめ】
・山積する問題における、米国と他国首脳との深すぎる溝。
・G7サミット中継では、トランプ氏は終始不機嫌。
・今回のサミットは一国主義、国家主権を最優先する世界を象徴。
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26日、今年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)がフランス南西部のリゾート地ビアリッツで3日間の日程を終え閉幕した。ビアリッツとは仏バスク地方にある美しい海辺の町。最近欧州でのG7サミットは風光明媚のリゾートで開かれることが少なくない。場所としては申し分ないのだが、会議の中身はお世辞にも美しいとは言い難い。
▲写真 フランス南西部 ビアリッツ 出典:G7 Facebook
そもそも今回は首脳宣言の採択が見送られたのだが、こうした観測はかなり早い段階から流れていた。逆に言えば、地球温暖化、米中貿易摩擦、国際自由貿易、イラン核問題、ロシアのサミット復帰論などをめぐる米国とそれ以外の首脳の溝は予想以上に深かったのだろう。議長のマクロン仏大統領もほぼお手上げだったようだ。
外務省現役時代、G7サミットには何度か関与したことがあるが、今回のように発出すべきペーパーができない、というか作れないなんて、ちょっと記憶にない。勿論、特定の問題の個々の表現をめぐり意見が収斂せず、へんてこな文言でお茶を濁すことはよくある。しかし、首脳宣言そのものが出ないなんて話は聞いたことがない。
そうこうしている内にCNN・USで米仏大統領による共同記者会見の生中継が始まった。雄弁家のマクロン氏は僅か1ページの議事要旨(?)を示しながら、G7の議長として「素晴らしい議論が行われた」などと自画自賛している。一方、その姿を横目で見るトランプ氏の表情は実に不機嫌そうだ。テレビカメラは正直である。
余程不愉快だったのか。トランプ氏の冒頭発言はサミットのUnityとフランスの偉大さに簡単に触れただけの、実に素っ気ないものだった。質疑応答でもトランプ氏は中国やイランの話ばかり、サミット議論の詳細には触れなかった。逆に言えば、これは今回のG7サミットが成果を挙げなかったことを暗示しているのかもしれない。
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