朝日新聞の歪んだアメリカ像
Japan In-depth / 2019年8月28日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・朝日がトランプ支持者を全体主義・権威主義と断じる粗雑な論文掲載。
・「朝日文化人」は朝日の主張をどぎつく拡散する「朝日御用達識者」。
・嫌いな対象をナチス・ドイツに例えるのは朝日の伝統的攻撃手法。
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かつて朝日文化人という言葉があった。朝日新聞がよく起用する、いわゆる識者たちのことだった。学者、芸能人、政治活動家、ジャーナリストなど多彩の顔ぶれだったが、みな朝日新聞の左傾の論調に大なり小なり同調する点が共通していた。
というより、朝日新聞が自社の特異な政治主張に賛成するような人物たちを探し、紙面に登場させて、自社の主張を明確に、ときにはもっと激しく、誇張する形で述べさせるという癒着メカニズムが存在した。この構造は現在でもそう変わりはないようだ。
そんな古い時代をふっと思い出したのは、この8月22日の朝日新聞朝刊で同紙の従来のトランプ大統領叩きの基調を過激にエスカレートするような、あまりに偏向した一文を読んだからだった。朝日新聞がトランプ大統領を批判し、非難し、攻撃してきたことは明確だが、今回の記事はトランプ支持者たちへの誹謗だった。
朝日新聞はそのトランプ支持者への悪口を、自社の記者ではなく外部の学者に述べさせていた。しかも自社の主張ならばおそらくためらうだろう極端な非難だった。だから私は朝日文化人という古い言葉を思い出したのだ。この言葉は朝日新聞御用達識者と呼びかえてもよい。要するに朝日新聞が主張したい言説、拡散したいプロパガンダを替わって、もっと激しく、もっとどぎつく述べてくれる人たちのことである。
今回の記事はオピニオン面の下段、「政治季評」というコラム欄に載った「トランプ氏を支持したのは『違い』を嫌う権威主義者」という見出しの論文だった。筆者は早稲田大学教授の政治学者、豊永郁子氏だった。豊永氏はときおり朝日新聞に登場して、安倍政権やその官僚をナチス・ドイツに重ねて叩く論法を展開した実績がある。
今回のテーマはトランプ政権とその支持者だから、いまワシントンでトランプ政権やアメリカの政治状況を取材している私にとっても関心は高かった。とくに現在、トランプ叩きの先頭に立ってきたニューヨーク・タイムズが「ロシア疑惑を使ってトランプ大統領を倒そうとしたが失敗したので、こんどはレーシズム(人種差別主義)を使おう」という編集局長の告白が外部にもれて、報道の原則を逸脱した政治偏向を各方面から非難されている。トランプ叩きの側にも一種の自省や反省がみうけられる時期なのだ。
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