インドネシア閣僚人事に待った
Japan In-depth / 2019年9月24日 18時0分
▲写真 ジョコ・ウィドド大統領(真ん中) 出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
■ 国軍への”重し”として登用の背景
2014年に大統領に就任したジョコ・ウィドド大統領は家具職人の家に生まれた地方自治体の首長出身という庶民派が売り物の大統領だけに治安問題の要となる国軍や警察といった治安組織に人脈もコネもなかった。
このため元国軍司令官で政党党首として政界で存在感を示していたウィラント氏をあえて起用することで国軍をコントロールし、勝手な行動を抑制させたいとの意向が働いたとされている。
しかし民主化の要求が高まり1998年に崩壊に追い込まれるスハルト長期独裁政権の末期に起きたトリサクティ大学学生射殺事件、スマンギ交差点無差別発砲事件、民主活動家拉致行方不明事件、さらに東ティモールの独立運動への弾圧など数々の人権侵害事件への関与が疑われていたのがウィラント氏だった。
このため2016年6月の内閣改造でウィラント氏が調整相に就任すると、米国務省は直ぐに反応して「ウィラント氏が国軍司令官在任時の人権侵害事件に関心を持っている。人権擁護は米政府の最も重要な政策の一つである」(アレン国務省報道官=当時)とやんわりとしかし明確な不快感を示した。
さらにKomnas HAMやKontrasなどの人権組織も一斉に「過去の人権侵害事件への関与が濃厚なウィラント氏が政治法務治安を担当する調整相に就任することで自らの疑惑を闇に完全に葬る危険性がある」と指摘。主要英字紙「ジャカルタ・ポスト」なども「ウィラント氏の起用はインドネシアの人権問題への取り組みの後退を意味する」「ジョコウィ大統領が人権問題に真剣に取り組む必要がないことを示した人事」などと厳しく批判した経緯がある。
ウィラント氏自身はいかなる人権侵害事件への関与も強く否定していたが、東ティモールの裁判所が「人道に反する容疑」で訴追、欧米をはじめとする国際社会からの追及、圧力が高まり、インドネシア当局も人権侵害の容疑でウィラント氏を事情聴取せざるを得ない事態に追い込まれ、捜査対象となるものの「証拠不十分」で責任追及はうやむやに終わっている。(Japan In Depth 2016年8月9日参照 人権侵害事件の黒幕、入閣の怪 インドネシア・ジョコウィ大統領の胸中 その1/人権侵害事件の黒幕、入閣の怪 インドネシア・ジョコウィ大統領の胸中 その2)
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