トランプ弾劾が成立しない訳
Japan In-depth / 2019年10月2日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視 」
【まとめ】
・「ウクライナ疑惑」で民主党、トランプ氏弾劾手続き開始。
・弾劾案は上院で否決される見通し。
・弾劾は民主党にとってブーメランとなろう。
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アメリカの民主党がついにドナルド・トランプ大統領への弾劾の手続きを開始した。アメリカのメディアも、日本の主要メディアもその動きを大々的に報じ、とくに反トランプ系媒体は同大統領が窮地に追い込まれ、解任されるような構図までを伝える。
だがこの弾劾は大統領を実際に辞任に追い込む展望はゼロに近い。しかも民主党にとって弾劾手続きによるトランプ大統領攻撃がブーメランのように自党側への負や傷となって襲ってくる危険も高いのである。こうした現実の認識は日本にとっての最重要の同盟国アメリカの国政の動きを客観的かつ正確にみるうえで欠かせないだろう。
アメリカ下院議長のナンシー・ペロシ議員は下院民主党の最高指導者として9月24日にトランプ大統領に対する弾劾のための調査の開始を公式に宣言した。調査の理由はいわゆる「ウクライナ疑惑」だった。
▲写真 ナンシー・ペロシ議員 出典:Flickr;Gage Skidmore
トランプ大統領が7月25日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で民主党ジョセフ・バイデン前副大統領の息子のウクライナ企業と癒着しての不正疑惑を捜査することを要請したという疑惑だった。
この要請がアメリカの連邦法などに違反する大統領の不当な職権乱用だというのが民主党側の非難だった。民主党が多数を占める下院では情報調査委員会などがこの疑惑の調査を開始した、というのがこれまでの経緯である。
民主党側ではトランプ氏が当選した直後からすでに弾劾を求める動きがあった。絶対に大統領になってはならない人物が選挙によって大統領になってしまったから、選挙ではない方法に訴えてでも、トランプ氏をホワイトハウスから追い出すという意図だった。そのためにアメリカ憲法でも認められている弾劾という措置の開始を叫ぶ声は民主党にも、民主党支持のメディアにも多かった。その際に反トランプ勢力が使った最大の武器は「ロシア疑惑」だった。
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