高松丸亀商店街「まちを縮める」(下)
Japan In-depth / 2019年10月4日 18時0分
それでは、どんなコンパクトシティーにすべきなのか。古川が力を入れているのは、医療の充実だ。「年をとれば丸亀町に住みたいねといってもらいたい。高齢者のパラダイスにしたいのです。私たちが安心して老後を暮らすために町を再生したいのです」。
すでに、商店街の中央の再開発ビルの4階と5階に診療所がある。自治会が運営する異例の取り組みだ。内科、眼科、整形外科、婦人科など7科のほか、リハビリセンターも備えている。いわば「まちのかかりつけ医」だ。
このビルの6階以上はマンションだ。古川はその住人を入院患者のように見立てる。
「診療所なので、入院施設はありません。しかし、上の階のマンションに住んでいる人はほぼ100%高齢者です。高齢者にとっては、自宅なのに、病室のような安心感があります。医師は24時間いつでも対応してくれるからです。医師にとっても、メリットがあります。往診や回診しやすい。マンションを回ればいいからです。自宅は世界最高の特別室なのです」。
■ 地域でお金を回す
医療を充実させ、人を呼び込む。そんな戦略を掲げるが、もう一つ力を入れているのは、「食」だ。地元の食材を中心に販売する店を開業した。運営するのは、商店街の地権者らがつくった会社だ。
店内には、無農薬の野菜や果物、コメなどが並ぶ。地元の契約農家から直接仕入れたものだ。卵も農場から直送される。マダイは、商店街から1・5キロの高松漁港から水揚げされた。目の前の海で獲れた魚は目玉商品となる。店舗に併設されたレストランには地元食材を使ったメニューもある。現在は仮店舗だが、今後移設し、大きな店舗にする。
「医・食・住」をテーマに掲げ、「まちを縮める」路線を貫いている。それは何も商店街だけに恩恵を与えるわけではない。地域の農家や漁師にとって安定した収入源となる。
農家は、農協ルートを通さないので、収入が増える。漁師も直接持ち込むので、安定した収入を得られる。商店街の再開発をきっかけに、地域でお金が回る仕組みを作り上げようとしている。
「僕たちがハッピーな老後を暮らすために、この街はどうすればいいのか。それが大事なのです。大きな風呂にも入りたいし、映画も見たい。だから、町営で温浴施設や映画館をつくることも計画しています」。
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