中東本格戦争に備えはあるか

Japan In-depth / 2019年10月12日 23時0分

中東本格戦争に備えはあるか


島田洋一(福井県立大学教授)


「島田洋一の国際政治力」


【まとめ】


・ ボルトン氏解任で中東での戦争勃発の可能性はむしろ高まった。


・サウジとイランの対立が戦争となれば、日本への中東石油は途絶。


・原発の大半が稼働停止の中、国会は石油途絶を想定した議論せよ。


 


10月11日、イラン国営メディアが、サウジアラビア西部ジッダ沖の紅海で、イランの石油タンカーが爆発を起こしたと報じた。タンカーの保有会社は「ミサイル2発による攻撃を受けた」と主張している。犯行声明などは出ておらず、詳細は不明である。いずれにせよ紅海、ペルシャ湾周辺が一触即発の状況にあるのは間違いない。


リベラル派には、戦争はアメリカが始めるものという固定観念がある。それゆえ、「強硬派」ボルトン大統領安保補佐官の排除で、アメリカがより自制的になり戦争の危機は遠のいたと胸をなで下ろす向きが多い。しかし事実はむしろ逆である。



▲写真 大統領補佐官を解任されたジョン・ボルトン氏。出典: flickr; Gage Skidmore


現に、ボルトン解任直後の9月14日に、サウジアラビアの重要石油施設がドローンと巡航ミサイルによる攻撃を受けた。米政府は種々の証拠に鑑みイランの犯行と断定、欧州主要3カ国(英仏独)も「この攻撃の責任がイランにあるのは明らかだ。他に妥当な説明はできない」との共同声明を出している(9月23日)。


イランは関与を否定するが、米英仏独の情報機関の一致した見解よりイランの神権ファシズム政権を信用すべき理由はない。



▲写真 イランの最高指導者ハメネイ師 出典:Wikimedia Commons; Seyedkhan


ボルトン解任による抑止力低下で、中東における大戦争勃発の可能性はむしろ高まったと見るべきだろう。


資源エネルギー庁の「エネルギー白書2019」によれば、日本は石油のほぼ全量を輸入に頼っており、うち中東産が87%を占める。中でもサウジとアラブ首長国連邦(UAE)の比率が高い。


現在中東政治における最大の動因は、スンニ派の盟主サウジとシーア派の盟主イランの対立である。ペルシャ湾を挟む地域大国サウジとイランの間で本格戦争となれば、クウェート、UAEなどからのものも含め、ホルムズ海峡経由で日本に来る中東石油はすべて途絶することになろう。ちなみに日本の石油輸入における「ホルムズ依存度」は80%超である。


アメリカやサウジからあえて対イラン戦争を開始する動機はないが、イラン側にはないとは言えない。アメリカが主導する制裁の強化によって、イランは石油の輸出が益々難しくなっている。最大の得意先だった中国企業にもアメリカは「第三者制裁」に乗り出した。


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