残留派に「白馬の騎士」現る ブレグジットという迷宮 その2
Japan In-depth / 2019年10月27日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・ポール・マッカートニー、2016年EU離脱決定を「誤りだった」と発言。
・ジョンソン首相の離脱案採決を求める動議、下院バーコウ議長が拒否。
・バーコウ議長とマッカートニーの2人はブレグジット反対派にとって「白馬の騎士」。
英国人にとってブレグジットは、政治・外交のみならず社会生活の様々な面で、一世紀に一度あるかないかというくらい、大きな変化をもたらすであろうとされている。
当然ながら多くの人が様々な立場で発言しているが、日本でも大きく報じられた例としては、元ビートルズの(令和の世では、わざわざこう紹介しなければならないようだ……)ポール・マッカートニーが、「2016年の国民投票でEUから離脱すると決められたが、あれは誤りだったと思う」と述べたことが、まず挙げられる。
彼は同時に、「投票日の時点で僕が考えたことは、離脱派・残留派ともに妥当な主張をしているとは思えなかったので、投票へは行かなかった」と正直に告白した。英国の世論に与えたインパクトは、こちらの方が大きかったようだ。
と言うのは、目下「国民投票のやり直し」を求めてデモなどを続けている人の中には、(どうせ残留派が勝つだろう)と決め込んで投票へは行かなかった、という人が相当含まれており、彼らに対しては、民主主義のルールを理解できていない、との批判が根強くある。ポール・マッカートニーの発言は、そうした人たちにとって福音となったのだ。
さらに言うと、離脱派と残留派それぞれの投票行動の実態を見ると、大いなる世代的ギャップが見て取れるのだが、この問題は,もう少し後で詳しく見よう。
前回述べた通り、10月19日の議会で、ジョンソン首相がEUの合意を取りつけた離脱案の採決は「先送り」となってしまった。なにがなんでも10月末までに離脱する、という公約に固執する首相は、週明けの21日に、再び採決を求める動議を議会に提出したが、今度は下院の議長が、「繰り返し(19日に審議済み)であり、無秩序である」として、これを拒否してしまった。
今回は、昨今わが国のメディアでも急に露出が増えた、この「名物議長」について簡単に紹介させていただこう。
ジョン・バーコウ英国下院(庶民院あるいは衆議院とも訳される)議長は、1963年生まれ。父親はタクシーの運転手で、このため日本では、保守党政治家には珍しい労働者階級の出身、と紹介されることもあるようだが、厳密に言うとこれは正しくない。
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