HPVワクチン捏造報道 二審も「名誉棄損」認定
Japan In-depth / 2019年10月31日 22時50分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(小寺直子)
【まとめ】
・HPVワクチン名誉棄損反訴請求控訴事件で、控訴人側敗訴。
・村中氏は会見で、上告受理申立てをする方針を明らかにした。
・大手メディアは女性の命と健康を守る報道を。
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんワクチン)に関する研究で、元信州大学医学部長(現現信州大学医学部附属病院難病診療センター特任教授)の池田修一氏が、医師・ジャーナリストの村中璃子氏を名誉毀損で訴えた裁判の二審判決が10月30日、東京高裁で行われた。秋吉仁美裁判長は、村中氏に請求の棄却を言い渡し、一審判決同様、村中氏が書いた記事による名誉毀損を認めた。
村中氏は今回の判決を受けて、上告受理申立てをする方針だ。一方、池田氏は代理人を通じて、「控訴審でも私の主張が認められました。引き続き、患者の治療と研究に真摯に取り組んでいきます」とのコメントを発表した。
■ 裁判概要
2016年3月16日、厚生労働科学研究班の主任研究者である池田修一信州大学元教授が、「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけに脳に異常な抗体が沈着して、海馬の機能を障害していそうだ」「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」と説明する映像がテレビで全国放送された。
これに対し、医師でジャーナリストの村中璃子氏は、月刊「Wedge(ウェッジ)」に「子宮頸がんワクチン薬害研究班 崩れる根拠、暴かれた捏造」と題した記事を寄稿して同研究発表の杜撰さを指摘した。
ところが、池田氏は学会や論文など科学の場での反論は行わず、村中氏やウェッジ社に対する名誉棄損訴訟を起こした。それを受けた厚労省も、「国民の皆様の誤解を招いた池田氏の社会的責任は大きく遺憾」と異例の声明を発表。また信州大が設けた外部有識者による調査委員会も「混乱を招いたことについて猛省を求める」などと報告している。また、再現実験・修正の要請もなされた。
2019年3月26日一審は敗訴となり、男澤聡子裁判長は村中氏らに330万円の損害賠償の支払いと、ウェッジに謝罪広告の掲載と『Wedge Infinity』の掲載記事の一部削除を命じた。ウェッジ社と元ウェッジ編集長は判決を受け入れ、村中氏はひとり控訴していた。
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