12月12日総選挙へ ブレグジットという迷宮 最終回
Japan In-depth / 2019年11月2日 19時37分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・英国議会は「身分制議会」として、13世紀から独裁防止のため誕生。
・英国の選挙制度の歴史そのものが古いため、政党の歴史も古い。
・英国下院の単純小選挙区制には制度的問題がある。
英国下院は、12月12日に総選挙を行う、との法案を可決した。
……マスコミ報道ならこの一行で済まされてしまいそうなのだが、これだけの情報でも、あらためて考えてみると、日本ではあまり知られていないことが多いようだ。
この秋、わが国では突然のラグビー・ブームが起きたわけだが、そもそも、「ラグビーは1チーム15人、40分ハーフで戦われる」というルールの一番初歩すら知らずに熱狂していた人も多いと聞く。
まあ、それはそれでよい。よく「にわかファン」をバカにする者がいるが、それこそ愚かな半可通だ。誰もが最初は「にわか」ではないか。とは言え、スポーツであれ海外からの情報であれ、基礎知識があれば一段と興味深く、そして深くウォッチングできることは事実であろう。
そこで今回、シリーズの締めくくりとして
「今さら人に聞けない英国議会」をお届けしよう。ただ、なにぶん700年以上の歴史を誇っているので、ここでの紹介は「超ダイジェスト版」に留まることを、あらかじめお断りしておく。
まず、英国の正式な国名は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」なので、議会の名称も本当は「連合王国議会」とすべきなのだが、私は日本の読者の便益を考えて「英国議会」で統一している。二院制で、これも本当は貴族院と庶民院(もしくは衆議院)だが、同じ理由で「上院・下院」と表記している。
13世紀に、国王の独裁に歯止めをかけるべく、貴族や地方の大地主が政治的発言の場を求めたことから議会が招集されるようになった。つまりこれが起源だが、当時から爵位を持つ者は貴族院、持たざる者は庶民院と分け隔てされていた。そう。当初から二院制だったのだ。上院・下院という俗称も、この「身分制議会」に由来する。
前述のように、議会の歴史は700年以上前までさかのぼれるのだが、現在の連合王国が誕生したのは1800年のことなので、現在の議会、という意味では、200年とちょっとの歴史ということになる。それでもかなり長いが。
したがってまた、長きにわたって上院が優位で、立法権はもとより司法権の一部まで掌握していたのだが、幾度かの選挙改革を経て、次第に身分や財産に関わりなく投票できるようになり、その結果、世襲の貴族や聖職者から成る上院に対して、選挙で選ばれた議員から成る下院の優位が確立して行くのである。
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