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池袋暴走事故に見る「正義の暴走」横行する「危うい正義」その2

Japan In-depth / 2019年11月19日 11時0分

池袋暴走事故に見る「正義の暴走」横行する「危うい正義」その2


林信吾(作家・ジャーナリスト)


林信吾の「西方見聞録」


 


【まとめ】


・池袋暴走事故の逮捕見送りは上級国民への忖度ではない。


・警察の説明不足が疑念を大きくした。


・池袋事故は事故であり、ネットの見当違いな「正義感」は改めるべき。


 


今年の4月、東京・池袋で乗用車が暴走し、多くの通行人をはねる事故が起きた。


 


31歳の母親と3歳の女の子が命を奪われ、他10人が重軽傷を負った大事故で、運転していたのは、旧通産省工業技術院の元院長。88歳だった。


 


当人も負傷して救急搬送されたため,警察は逮捕を見送ったが、これがネットを中心に「上級国民に対する忖度ではないのか」という疑惑を招くことになった。


 


キャリア官僚として勤め上げ、叙勲までされていることが、逮捕が見送られた理由ではないのか、というわけだ。上級国民という表現には、苦笑させられたが。


 


この事故の少し前には、神戸市で市営バスが暴走し、死傷者が出た。また、前述の元院長は11月12日に書類送検されたが、その直前にも、八王子市で軽自動車が保育園児の列に突っ込む事故が起きた。いずれも、運転手は現行犯逮捕されている。


 


つまり、多くの人が「これは忖度ではないのか?」と疑念を抱くのも、一応もっともだと思える。そこで知り合いの弁護士に聞いてみたのだが、


「現場の警察官は、そんな判断はしないでしょう」という答えが返ってきた。


 


よく誤解する人がいるが、逮捕というのは刑罰でもなんでもなく、犯罪を起こした疑いのある人=容疑者の身柄を確保して取り調べるための、法執行手続きに過ぎない。しかも、厳密な時間制限がある。


 


まず、警察の権限で身柄を拘束できるのは48時間。次いで検事の持ち時間が24時間。つまり、起訴するに足る証拠がないとされれば「3泊4日」で釈放される。もちろん、アリバイがあるとか、犯罪と無関係だと立証されれば、もっと早い。


 


検事が勾留を認めた場合は、まず10日間。さらに取り調べを進める必要ありという場合は、裁判所に勾留延長の許可を求めねばならず、これが認められれば、さらに10日間。ちなみに逮捕状も裁判所が発行するもので、現行犯逮捕とは、法律的にはこの手続きを省略したと見なされる。


 


要するに最長23日間は容疑者の身柄を拘束できるのだが、逆に言えば、その期間内に処分(具体的には、起訴するか否か)を決定しなければならないのである。


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