故郷創世塾の熱気 「地域再生の神様」豊重哲郎氏 下
Japan In-depth / 2019年11月25日 10時58分
出町譲(経済ジャーナリスト・作家、テレビ朝日報道局勤務)
【まとめ】
・「地域再生の神様」豊重哲郎は「故郷創世塾」を開講。
・集落に暮らす若者も講師として参加。
・1000人を超える豊重氏の教え子たちが各地で地域再生に取り組む。
(上の続き)
■ 故郷創世塾の熱気
「地域再生の神様」とも呼ばれる豊重哲郎は、自らが塾長を務め、「故郷創世塾」を開いている。補助金に頼らず、自主財源で地域を再生させた「実績」を教えている。〈やねだん〉のDNAは着実に全国に広まっている。
久々に訪れた創世塾はやはり熱気にあふれていた。揃いの黄色い法被を身にまとい、講義を受ける男女がいる。みな一様に真剣な表情だ。彼らは北海道から九州までの自治体や社会福祉法人の職員らだ。20代や30代の若手が中心で、総勢56人。
塾長の豊重哲郎は、独特の熱気を放つ。時には大声をあげる。講義をしながら、突然塾生の名前を呼ぶ。眠い目を凝らしていた塾生ははっと目を覚ます。そこに豊重は近づき、肩に手をやったりする。
驚くべきことに、豊重はこの塾の最初の日に、すべての塾生の名前と出身、仕事内容などを覚える。あっという間にファミリーのようになっているのだ。
「命がけで地域再生をしろ。地域再生に必要なのは、絆であり、財政力だ」
「ゼロ歳から7歳までの子どもたちには、名前を呼んで、笑顔で話しかけろ。子育ては家庭に任せきるのではなく、地域も関与すべきだ」
「人材ではなく人財だ。人は財だ。教育とは変わることだ。地域再生には、義理人情が大事だ。住んでよかった。生まれてよかった。そんな地域にしなければならない」
「高齢者は地域の財産だ。いろんな経験は生き字引で、図書館のようなものだ」
豊重はシンプルな言葉を吐く。しかし、自らの地域おこしの経験を通じたものだけに、説得力がある。塾生たちは熱心に聞く。
この塾はとにかくハードだ。睡眠時間は平均2時間。午前4時ごろでも豊重の声は響く。まさに不眠不休の状態だ。豊重の話を聞きながら、感極まって涙を流す塾生もいる。
故郷創世塾の講師陣は豊重以外にも、内閣府地方創生推進室参事官の澤田史朗、元総務省自治財政局長を務め、地域活性化センターの理事長を務める椎川忍らが名を連ねる。
ユニークなのは、集落に暮らす若者も講師になっていることだ。今村秀平もその1人。高校を卒業後、福岡でしばらく勤務していたが、Uターンした。薬品会社に勤めている。
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