がん検診革命リキッドバイオプシー
Japan In-depth / 2019年11月30日 11時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
【まとめ】
・がん対策には「予防と早期発見」が重要。
・がん検診にリキッドバイオプシーという画期的な技術が開発。
・リキッドバイオプシーが医療業界に与える不安要素も。
福島県で活動を続けていると、がんの相談を受けることが多い。先日、知人の50代の男性から
「がんを早期発見するにはどうすればいいのでしょうか」と聞かれた。
彼は相馬市で生まれ、相馬市で育った。東日本大震災以降も、この地に留まっている。福島第一原発事故による内部・外部被曝の影響は軽微なことを知っており、放射線の影響を気にしているわけではない。
彼が心配なのは家族にがん患者が多いことだ。体質を引き継いでおり、また食生活など生活習慣も似ている。さらに肉親の闘病生活を見てきた。自分も癌になるのではないかと心配している。
がん対策の肝は予防と早期発見だ。胃がんはピロリ菌感染、肝臓がんは肝炎ウイルス、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの感染を防ぐことで、ほぼ予防できる。除菌方法やワクチンが開発された。
それ以外のがんでは早期発見が重要だ。治療成績は早期発見にかかっていると言っても過言ではない。
ただ、がんの早期発見は難しい。それは早期がんの患者の多くは無症状だからだ。症状が出てから病院を受診しても手遅れの事が多い。がんを早期発見するには、無症状の人に検査を受けてもらわないといけない。つまりがん検診を受診して貰わねばならない。
わが国では肺がん、胃がん、乳がん、大腸がん、子宮頸がんを対象に公的ながん検診が実施されている。健康増進法に基づき市区町村が実施する。補助金が出るため、自己負担は少額か無料だ。
がん検診には問題も多い。技術が未確立で、検出率が高くないのだ。例えば、肺がんの場合、多くの早期がんを見逃してしまうことがわかっている。
わが国の肺がん検診は胸部X線検査を用いるが、胸部X線検査の解像力は低く、微少な病変や心臓など縦隔組織と重なると見落としてしまう。世界の趨勢は被曝量を減らした低線量CT検査である。ところが、わが国では、さまざまなしがらみがあり、胸部X線検査から低線量CT検査への移行が遅れている。
最近、がん検診の在り方を抜本的に変えるかもしれない画期的な技術が開発された。それはリキッドバイオプシーだ。
リキッドバイオプシーとは、血液や脳脊髄液、あるいは胸水や腹水などの「リキッド(液体)」のサンプルを用いて、がんの診断や治療効果の判定を行うことだ。ゲノム解析を行うことも可能だ。ゲノム情報が分かれば、がんの遺伝子情報に基づく個別化医療が可能になる。
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