香港民主化問題、米にも波紋
Japan In-depth / 2019年12月4日 18時0分
島田洋一(福井県立大学教授)
「島田洋一の国際政治力」
【まとめ】
・法律界のエリート、テッド・クルーズ米上院議員が香港入り。
・クルーズ氏は現地民主活動家と意見交換、香港の政治的自由維持を支持。
・クルーズ氏ら超党派議員がNBAの対中「屈服」問題に非難。
約1か月半前(10月12日)、最も発信力のある米保守派の1人、テッド・クルーズ上院議員(共和党)が、デモ隊と「警察」の衝突で揺れる香港に入った。米有力政治家が、6月に大規模デモが始まって以来初めて現地入りするとあって、その言動に大いに注目が集まった。
2016年大統領選の共和党候補指名をトランプ氏と最後まで争ったクルーズ氏(1970年生)は、米政界における影響力を着実に伸ばしている。
同年代(1971年生)のマルコ・ルビオ上院議員同様、キューバ難民の子弟で人権問題に関心が強く、反中国共産党の立場を鮮明にすることにおいて双璧をなす。2人は大統領を目指すライバルであるが、共同して、中国に対する様々な制裁法案や決議案を出し、成立させてきた。
▲写真 マルコ・ルビオ上院議員 出典:Flickr; Gage Skidmore
クルーズ氏は、その戦闘的物言いや現場重視の行動力からはやや意外だが、法律の世界におけるエリート中のエリートである。
ハーバード・ロースクール修了後、若くして頭角を現し、連邦最高裁判所首席判事の法務助手(law clerk)に抜擢された。最高裁判事(定数9人)はそれぞれ4人、計36人の若手法律家を助手に用い(任期数年)、膨大な上告案件のうちどれを審理するかの選別や、判決文の草案作成などを相当程度委ねる。中でも首席判事の助手は、最高裁全体の統括の仕事も手掛け、30才前後ですでに米国司法の中枢にあると見なされる。
「誰よりも法律に強い」が政治家クルーズの大きな武器である。本人は、書類に埋もれた「修道院のような生活」より政治闘争の場の方が性に合っていると、少なくとも今のところ否定的だが、将来の最高裁判事の候補でもある。
さて、香港における記者団との応答の場に、民主活動家との連帯を示す黒ずくめの服装で現れたクルーズは、中国を「専制国家(dictatorship)」と繰り返し呼び、香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が予定された会談を直前にキャンセルしてきたと明かした。会談を極秘扱いにという林鄭氏側の要求をクルーズ氏が拒否したためだという。
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