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仏、多文化共生ストレスの現実

Japan In-depth / 2019年12月20日 19時0分

弁護士をめざすキャリーンは、インタビューでは博士号を取得と言っていたが、フランスの学校では修士入学レベルと同じ程度と判断され、フランスの大学の法学部・修士に入る予定になっていた。そのため、DALF C1を取得することを目標としていた。


大学の入学書類は5月をめどに提出する必要があるため、3月末のDALFの試験を受けることが必須だが、10月でA2レベルではかなり難しいところだ。しかしそのことを説明する度に、彼女はクラス内で何回も自分の主張を繰り返したと言う。


「私は、C1を取るのです。トルコでは一年でトルコ語の上級レベルになれました。C1になれます」


教師はこれにはほとほと困っていた。


キャリーンの現在の語学レベルはA2である。難民・亡命者は講習を受ける義務があるため、週2回ほど授業にも出席できない。レベルB1のクラス内でも、明らかについていけてない。そんな状況で、3月末までにDALF C1に受かるとは到底思えない。


しかしながら、何回もこの暗示のような言葉がクラス内で繰り返された。そこまで真剣な思いがあるなら、それなりに力になろうと努力もしたが、年月などの蓄積が大きく影響する語学能力を、突然大幅に向上させられるはずはない。特別に時間を割いて授業をしたこともあったが、無理な注文に教師の方がまいってしまったようだ。


何度も無理であることを告げても、頑として理解しようとしない。その会話が繰り返されるうちに、裏工作をしてでもC1に入れろと言われてるようにも感じ、脅迫されている気分になってきたと言う。


夢と希望を持ち、強い意志を持っているため亡命できたと思うが、その強固さが、フランスの現実をよく知り普通の生活をしてきている教師には負担となる。特に教師がなんとかしてあげたいと思っていればいるほど大きな負担を感じることになる。


その後、そんなやり取りの中、教師とキャリーンの間には溝ができていく。



▲写真 フランスの学生。ルーツは様々。写真と本文は関係ありません。 出典: フランス国民教育省ホームページ


 


■ 文化の違い?個人の感覚の違い?教育の違い?


ところで、難民・亡命者用の義務講習のため、週5日ある授業のうち、2回も授業に出席できないこと自体、実は、フランスの学校ではスキャンダルな事態であった。


日本であればもしも学校に来られないなら、「自己責任」とはされるものの、先生が気をつかってくれることの方が多いかもしれない。しかし、フランスでは、一般的に学校に来られないのは「義務を怠っている」ことであり、先生が学生に気遣うことなどなく、プリントが欲しいなら友達に頼むのが普通とされているのだ。小学校でもそうなのである。大学の教育機関ならなおさらだ。


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