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仏、多文化共生ストレスの現実

Japan In-depth / 2019年12月20日 19時0分

キャリーンからも平行して話を聞いていたが、キャリーンは「勉強は問題なくやっています。来年大学に入るために試験を受けなければいけないので勉強しなければいけないけど、大丈夫。フランスは素晴らしいわ。イスラム教でもどんな宗教でも、なんの争いもなくみんな一緒に暮らしているのよ」と言う。


彼女の話だけを聞けば、模範生徒として何も問題は見えてこない。フランスは素晴らしいというようなポジティブな言葉は、他の難民からも同じような言葉で語られるのを何回も聞いたが、難民や亡命者を対象にした講習で、そのように説明されるのかもしれない。


そんなキャリーンの思いとはうらはらに、相当ストレスを溜めていたフランス人教師ではあったが、最後まで親身になる姿勢は貫いた。成績についても感情に偏ることなくポジティブな気持ちで正当に評価したという。


最後の最後に、キャリーンは、本試験の前の日に理由もなく休むという、さらに教師をいらだたせる行動を起こした。しかし、教師の熱心な啓発活動のおかげか、本番試験当日には遅刻することもなく無事試験を終えた。


キャリーンは、その学期末に行われるB1の試験に合格したのだろうか?結果についての言及は避けることとするが、今回、このように教師の体験談をうかがって一つ理解したことがある。それは、フランス語のコースは、難民や亡命者にとって、フランス語だけを学ぶ場ではなく、フランス社会の規律も学ぶ場になっているということだ。そして難民や亡命者を教えるための研修を受けたわけでもない一般の教師には、それがとても大きな負担になっている現状である。


フランスで難民や亡命者が住民と共存していくためには、そこで暮らす住民がフランスの学校などで身につけてきた一般常識も身につけていかなくてはいけない。難民や亡命者を対象にした講習で説明されるかもしれないが、身をもっては経験していない。そのため実際に住民と共存していく上でこのような混乱が生まれるのだ。そして少なからずもその負担を背負う人が出てくる。しかし、多文化を受け入れるならば、必ず通らなければいけない道なのである。


ここで、日本について考えてみると、今後、外国人が増えるにつれ同様な問題が多く発生する可能性があることは簡単に想像できる。しかも日本の一般常識の厳格さはフランスよりも上である。それに対して、ほんとうに外国人が対応していけるであろうか。そして、住民や関わる教育者がストレスなく一緒に過ごしていくことができると言えるだろうか?


このフランス語のコースでの教師との日々で、キャリーンがフランス語のみならず、少しでもリアルなフランスの雰囲気を学べたことを願わずにはいられない。そして、この話を聞かせてくれた教師も、今頃はバカンスを楽しみ、心身ともどもリフレッシュしていることを心から願うのだ。


トップ写真:イスラム教徒のヴェールを身につけた女性とエッフェル塔(2011年6月)。写真と本文は関係ありません。出典: Flickr; Gideon Wright


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