仏、多文化共生ストレスの現実
Japan In-depth / 2019年12月20日 19時0分
しかし、今回はもう始まってしまったことなので、こういった通常は許されない事態が受け入れられたが、次の学期からは、授業の欠席が多い場合は入学を受け入れないと言い渡された。
そして、すでに欠席の点において妥協をし、一度その状態を受けいれることと決まったなら、その中で最大限の努力をするのもフランス人の教師だ。生徒の強い要望に応えるためにも、他の自費で高額な授業料を払ってきている裕福な国から来ている学生に対するよりも、さらに親身に対応した。しかし、キャリーンは、その恩を返すどころか、期待を裏切る行為を常習としていた。
それは、「遅刻」である。毎回とは言わないが、かなりの頻度で朝、遅刻してきたという。
フランスに生まれフランスの学校に通っていれば、中・高と、理由もなく遅刻することがない生活を要求される。遅刻が多いと記載された生徒は、大学入学のための書類選考で振り落とされる可能性もある。また大学に通う学生は、外国人でも、ほぼ全員が高校を卒業しており、その辺りの基本的なマナーをきちんと理解している。これほど遅刻をする学生はほんとうに珍しいのだ。
さらに教師を激怒させたのは、中間試験のため絶対に遅れないようにと何度も念を押したのにも関わらず、キャリーンは試験当日も20分の遅刻をしたことだ。
到底、受け入れられない事実でありながらも、教師の手でなんとか試験を受けることができたキャリーン。試験後にされたお説教の時間はかなり長いものとなった。
■ 募るストレス
実は、教室内には、もう一人中東から来た難民の女性がいたそうだ。彼女は、早い時点でリタイアして去って行ったが、キャリーンとの共通点があった。二人とも授業中に、授業の趣旨から離れた話を、よく考えもせずに話し始めるのだという。質問と言えば質問なのだが、プライベートな話を挟んで、それは「性」に関する人生相談的な話に発展したりもする。周りの外国人学生は、その間じっとその話を聞くはめになるという。
しかも、授業を週2回休むので、休んだ日の分のプリントを教師からもらうことになったのだが、出席していなければできない内容のプリントについても、「このプリントをもらってない」などと、強く要求した。実際はすでにもらっていたのにかかわらず、強引な要求を繰り返したこともあったという。そんな言い争いを続けて授業の数10分が消えていくのだ。
一つ一つを見れば、些細なことかもしれないが、何回も繰り返されることで教師の日々溜まっていくストレスは、尋常ではなかった。
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