米朝対立、激化必至【2020年を占う・朝鮮半島】
Japan In-depth / 2020年1月5日 19時0分
朴斗鎮(コリア国際研究所所長)
【まとめ】
・金正恩、昨年末までに、米の「譲歩」得られず。
・金正恩のカードは「新たな戦略兵器(核兵器)」、中朝同盟、文在寅大統領の利用。
・2020年は米朝対立激化の方向となる可能性が高い。
筆者は2018年末に2019年米朝非核化交渉のシナリオとして
①金正恩の核申告履行で順調な「米朝非核化対話」の進行
②交渉の停滞で再び米朝緊張状態への回帰
③トランプ大統領の無原則な妥協で北朝鮮の核保有実質認定
の3つのケースを上げ、もしも2019年前半に意味のある米朝会談がもたれない場合、朝鮮半島は②の「再び米朝緊張状態への回帰」の方向に動く可能性が高まると予測したが、この予測は的中したようだ。
■ ハノイ米朝首脳会談で明らかになった「同床異夢」
2019年2月27・28日米朝はハノイにおいて2回目の米朝首脳会談を行ったが、非核化についての理解が全く異なっていたために、会談は決裂した。トランプ大統領は初めて「朝鮮半島非核化」を「北朝鮮の非核化」と理解した自身の認識が間違っていたこと、金正恩に核を放棄する意思がないことを知った。
しかし、両者は各々の思惑から「蜜月ショー」を続けた。6月30日には板門店での「会合」を持ち、トランプ大統領と金正恩委員長が個人的関係を温め、あたかも「北朝鮮の非核化」が進展しているかのように見せつけた。だがこれも10月5日の「ストックホルム米朝実務協議」が破綻したことでその「ショー」の化けの皮は剥がれた。
▲写真 トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長(2019年6月30日 板門店) 出典: Facebook; The White House
■ 外交・軍事的圧力で先「制裁緩和」を求め続けた北朝鮮
その後北朝鮮は、4月12日の最高人民会議で期限を切った年末までに譲歩を勝ち取るために、5月10日から12月12日まで20回以上に渡り、国務委員会、外務省、アジア太平洋平和委員会談話や、外務省高官の李容浩、金桂寛、崔善姫、リ・テソン、巡回大使、アジア太平洋委員会委員長の金英哲、朝鮮労働党副委員長の李スヨンなど対外・対米関係の機関と高官を総動員して米国に圧力をかけ、12月末までに米国が譲歩しなければ「新しい道を進む」と圧迫した。
それだけではない。5月4日から11月末までに13回に渡り新型短距離弾道ミサイルとSLBM、そして大型放射法(ロケット砲)25発を発射して圧力をかけた。そして12月4日には党中央委員会第7期第5回総会を12月下旬に招集することを決定し、クリスマスに米国に「贈り物」を受け取ることになると、ICBMの発射があるかのように揺さぶった。ICBMの発射中止と核実験の停止は、トランプ大統領の対北朝鮮交渉での唯一の「成果」だったからだ。そこをつけばトランプが譲歩すると思ったに違いない。
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