米国がイランに勝てないわけ
Japan In-depth / 2020年1月10日 19時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・米国とイランは全面交戦には至らず、武力対立は限定的範囲に収まる。
・無名の師をめぐる戦争は誰からも支持されず、米国に利益はない。
・そもそも米国はイランに侵攻できず、勝てない。
イラン情勢の激化には天井がある。米国とイランの敵対的対立は限定的範囲に収まる。
米国・イラン関係の緊張が高まっている。これはトランプ政権の対イラン強硬対応の結果だ。政権発足直後のイラン制裁強化、18年の核開発合意の反故、19年の原油禁輸措置における例外撤廃、有志国連合による艦隊派遣決定を経て今回の事態、イラク国内における暗殺とイランによる報復の事態に至った。
だが、その対立には上限がある。米国は対イラン全面戦争はできない。そのため今後にエスカレーションが進んでも米国とイランの全面交戦には至らない。そのため激化には限界がある。
それはなぜか。
その理由を3つに整理して示せば次のとおりである。1つ目は無名の師であり誰も戦争を支持しないため。2つ目は米国に利益は産まないため。3つ目はなによりも米国はイランに勝てないためだ。
■ 無名の師
米国は対イラン全面戦争を挑まない。
その1つ目の理由は戦争無支持である。
米国がイランと戦争を行う。それを米国民や国際社会は支持するだろうか? 反語的に述べればそういうことだ。いずれも対イラン戦争を支持しない。あるいはトランプ政権が戦争を挑もうとしてもそれを止めさせる。
米国民からすれば無名の師である。
なによりも米国には熱狂がない。「攻撃された」実感はない。9.11との牽強付会により熱狂的支持が得られたイラク戦争やアフガン戦争とは異なる。しかも米国内には両戦争への懐疑はいまだ充満している。
大義名分もない戦争はまったく支持されない。しかもイランは強敵である。政権が進めようとしても国内各階層は全力でそれを止める。
また国際社会もそれを支持しない。そのため米国も戦争には踏み切れないのである。
それを支持する国はまずはない。サウジとUAEくらいなものだ。(*1)
▲写真 日イラン首脳会談(2019年12月20日)。日本すら対イラン戦争は支持しない。出典: 首相官邸ホームページより
■ 米国に利益はない
2つ目の理由は米国利益の皆無である。
これも反語的に理解できる。米国はイランと全面戦争をして何か得られる利益はあるだろうか?そういうことだ。
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