反政府デモ拡大・左翼結集【2020年を占う・中南米】
Japan In-depth / 2020年1月17日 18時32分
山崎真二(時事通信社元外信部長)
【まとめ】
・2020年の中南米、大規模な反政府抗議デモが各国に波及する。
・膠着状態が続くベネズエラ情勢に影響を与える可能性も。
・アルゼンチン新政権、深刻な経済危機に陥るリスクも。
2020年の中南米では 先ごろチリで発生したような大規模な反政府抗議デモが各国に波及する可能性がある。
■ 経済格差是正要求に対応できず
2019年10月中旬に発生したチリの反政府デモは、サンティアゴで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議中止というハプニングを招いたが、その後も2カ月以上続く異常事態となった。チリ政府が、デモのきっかけとなった地下鉄運賃値上げの撤回、閣僚の入れ替え、さらに市民らが要求していた憲法改正国民投票の実施方針など相次いで譲歩を示したにもかかわらず、デモが長期化したのはなぜか。その原因についてチリ・カトリカ大の政治学者は「デモの背景には深刻な経済格差があり、抜本的改革なしにはすぐに対応できないという事情がある」と分析する。
1990年の民政移管後、安定した民主政治の下、順調な経済成長を達成し、「中南米の優等生」と呼ばれるチリだが、2013年以降は中国経済の減速もあり、主要輸出産品である銅価格の下落によって景気が低迷、慢性的な経常赤字と財政赤字を抱えている。銅輸出に過剰依存している経済構造を改革しない限り、経済格差拡大で鬱積したチリ国民の不満は解消できない、と多くの専門家が指摘する。
▲写真 サンティアゴで行われた大規模なデモ 2019 出典:Wikimedia Commons:Carlos Figueroa
経済・社会格差に起因する反政府抗議行動やデモはチリだけでなく、他の中南米諸国でも起きている。エクアドルでは2019年10月、燃料補助金廃止など政府の緊縮経済政策に反対するデモが全土で繰り広げられた。エクアドル政府は当初、燃料補助金廃止に変更はないと強硬に主張していたが、デモの拡大で結局、廃止撤回に追い込まれた。政府が大幅譲歩した格好だが、抗議行動の背景には社会格差を要求する先住民運動の高まりが絡んでおり、これで“一件落着”とはなりそうにない。同11月にはコロンビアでも、政府の労働改革や年金制度改革に反対する大規模なデモやゼネストが行われた。米国の中南米専門シンクタンク「インターアメリカン・ダイアログ」(IAD)の研究者はこれら三カ国に加え、ブラジル、アルゼンチンでも反政府デモが再発する可能性を指摘、「中南米では2000年代初めからの資源ブームによる経済成長で増大した中間層が社会・経済格差是正を叫び、福祉や教育面の充実などを求めているが、今や各国とも経済の低迷で財源がなく、反政府抗議活動が今後、この地域で連鎖的にかつ長期にわたり起きる可能性がある」と警告する。
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