なぜ進まぬ迎撃魚雷の実用化
Japan In-depth / 2020年1月25日 7時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・迎撃魚雷の実用化が進まない背景には3つの問題がある。
・「敵魚雷探知の困難」「迎撃魚雷の性能不足」「自己雑音の問題」。
・無騒音魚雷が出現すれば、自己雑音問題伴う迎撃魚雷では対抗不能に。
迎撃魚雷のアイデアは古い。敵ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とす。その魚雷版として昔から構想され研究されてきた。実際に米国は80年代、NATOも97年から研究を始めており今では米、仏伊、露、独が開発を進めている。
しかし、実用化は遅々として進んでいない。これまで迎撃魚雷4種を製作した米国はいまだに研究中としている。MU-90HK魚雷を試験中の仏伊も基礎段階としている。露独も同じようなものだ。露はPAKET-E/NK魚雷を、遅れて独もシー・スパイダー魚雷を実用段階と宣伝している。だが専門誌記事ほかでは露独魚雷の実用性は疑問視されている。(*1)
・なぜ迎撃魚雷の実用化は進まないのか?
そこには3つの問題があるからだ。1つ目は敵魚雷探知の困難、2つ目は迎撃魚雷の性能不足、3つ目は自己雑音の問題である。
▲写真 独のシー・スパイダー迎撃魚雷。製造元は「実用段階にあり各種魚雷に対して有効」と宣伝している。だが米仏魚雷よりも実用性に優れるといった印象はない。
出典: 写真は製造元ATLAS ELEKTRONIKの紹介ページより」
■ 敵魚雷の探知は難しい
1つ目の問題は魚雷探知の困難である。
敵魚雷の探知は容易ではない。そもそも探知は確実ではない。そのため迎撃魚雷の発射が間に合わない可能性も高い。これは迎撃魚雷の実用性を今一つとする原因である。
敵魚雷の探知には騒音が利用される。水中ではレーダやカメラは通用しない。電波や光はほぼ使えないからだ。だからそのため水中監視では音響が活用される。魚雷探知ならそれらしい騒音の聴取で「敵魚雷接近」と判断する。
だが、魚雷騒音は探知できない状況もありうる。水中音響は気まぐれだ。至近距離まで全く聞こえない状況も発生するのだ。(*2)
その場合には迎撃魚雷は発射できない。突然の魚雷命中となる。
また、近距離まで探知できない状況もありうる。水中音響の気まぐれにより1km以内でようやく探知できる状況だ。
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