日本文化と古代イスラエル 笑うに笑えない都市伝説 その2
Japan In-depth / 2020年1月27日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・古代イスラエルの一氏族が日本に渡来したとの都市伝説がある。
・「痕跡」話は笑うしかないもの多いが、渡来はあっても不思議でない。
・天皇陵発掘調査と、皇室をどう考えるかは別。絵空事でない知識を。
いにしえの日本には、古代イスラエルから様々な文物が伝わった、という都市伝説がある。詳しく語り出すと、とても紙数が足りないのだが、要するに紀元前7世紀以降、消息が途絶えていた古代イスラエルの10氏族(世に言う失われた氏族)のひとつが日本に渡来した痕跡があるのだという。
問題はその「痕跡」だが、笑うしかない話のオンパレードである。
たとえば有名な『ソーラン節』だが、日本語では意味不明なのに、ヘブライ語で聞けば、ヤーレン、ソーラン。ソーラン……というフレーズが、
「踊って喜ぶ、飛び跳ねて踊る」
という風に、ちゃんと意味が通るのだとか。
▲写真 ソーラン節のパフォーマンス(2016年10月 カナダ・モントリオール)出典: Public domain
私はヘブライ語を解さないので、これは「素人の素朴な疑問」であることを明記しておくが、古代イスラエルの言語とは、今のイスラエル人やユダヤ人が聞いても、ちゃんと意味が分かるものなのか。
現代日本の若い女性が1000年ほど前にタイムスリップしたとして、紫式部と「恋バナ」ができるかと言えば無理だろう、と考えられている。恋愛観がどうのこうのという以前に、日本語がまったく別物になっているからだ。当時、銀座という地名は発音しがたく「キジャ」にしか聞こえなかっただろう、というように(どうしてそんなことが分かるんだ、という別の疑問もわくのだが)。
さらに言えば、かつてアイヌモシリと呼ばれていた土地に和人が進出して「北海道」ができてから、まだ200年も経っていない。その北海道で生まれた民謡の一節が、たまたまにヘブライ語で意味が通るとして、それで一体なにが証明されるのか。
これだけではない。
日本古来の相撲のかけ声、すなわち
「はっけよい、のこった、のこった」
というのも、ヘブライ語で解釈できるのだと、盛んにネットで発信している人もいる。こちらは「投げつけて勝て」という意味になるそうだ。
はっけよい、は「発気揚々」つまり現代語で言えば「気合い入れて行けよ」といった意味で、のこったは「残った」すなわち「まだ勝負あってないぞ」という意味かとばかり思っていたが、違うのか。
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