中東は日本の生命線なのか?
Japan In-depth / 2020年2月5日 7時26分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・中東産石油は日本の生命線ではない。
・石油需要は縮小している。その需要も相当分は天然ガスで代替できる。
・必要な石油は中東以外から入手できる。
「中東産石油は日本の生命線である」と信じられている。日本人には石油途絶による戦争敗北とオイルショックの経験がある。中東石油途絶は存亡に関わる。中東石油の確保は最優先である。そのように考えている。
この石油生命線論は今回の自衛隊中東派遣の論議でも表出した。野党は海自派遣の手続きに穏当な疑義を表明した。それに対して一部保守層は想像上の危機感から「石油輸送に携わる日本タンカーを見捨ててよいのか」と感情的反論を寄せたのだ。
▲野党の海自派遣反対の趣旨は政府の議会軽視を糺すものでしかない。またペルシア湾海上輸送も危機的状態ではない。しかし一部保守層は反対に「石油輸送に携わる日本タンカーを見捨ててよいのか」とズレた反発をなした。写真は派遣に疑問を呈する立憲民主党・枝野幸男代表。
出典: 『衆議院インターネット審議中継』2020年1月22日本会議より。
だが、本当に中東産石油がなければ日本は滅亡するのだろうか?
それは誤りだ。もはや中東産石油は日本の生命線ではない。必要な原油は中東以外から入手できる。その途絶は日本エネルギー確保の崩壊は意味しない。短期間の混乱が引き起こされるだけだ。
その理由を順番に説明すれば次のとおり。
1 今の日本の石油購入量は以前の半分程度でしかない。
2 その石油輸入量も天然ガスで相当分が補える。
3 その上で必要な石油は中東以外から購入できる。
■ 石油需要は最盛期の64%
中東産石油は日本の生命線ではない。必要量の石油は中東以外から入手できる。そう判断できる。
第1の理由は石油需要の縮小である。資エネ庁最新の白書によれば日本石油所要量は最盛期の半分程度でしかない。(*1)
石油消費のピークは1973年である。年度内に日本には2.9億klの原油が供給された。
それが2017年度では64%まで縮小した。年度供給量は1.9億klでしかない。
図)筆者作成
これは産業構造変化と省エネ技術発展、そして天然ガス転換の結果である。
まずはエネルギー消費量が縮小した。同期間に日本の実質GDPは2.6倍に増えた。だが化石燃料供給量は熱量換算で1.2倍にしか増えていない。これは産業構造が製造業からサービス業に変化し省エネが進んだ結果だ。
この記事に関連するニュース
-
【JX石油開発】パプアニューギニア PNG LNGプロジェクト アンゴレガス田の生産開始について
PR TIMES / 2024年11月28日 16時40分
-
日本などG7は「気候変動対策への財政負担から逃げ続けてきた」...COP29でも向けられる厳しい目
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月16日 16時48分
-
OPEC、24・25年世界石油需要予想を再度引き下げ
ロイター / 2024年11月13日 2時18分
-
トランプ返り咲きで金や原油価格はどうなるのか 長期金利は一段と上昇する懸念が出てきた
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 13時0分
-
2025年の一次産品価格は5年ぶりの低水準へ、世界銀行見通し(世界)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月5日 10時50分
ランキング
-
1石破首相、幅広い合意形成に全力=「103万円の壁」見直し―政治改革に意欲・所信表明
時事通信 / 2024年11月29日 19時3分
-
2《沈黙続ける折田楓社長》「朝、PR会社の方から直接連絡がありました」兵庫県HPから“同社記事が削除された理由”
NEWSポストセブン / 2024年11月29日 7時15分
-
3「クラフトナイフを事前に購入した」加古川女児殺害の容疑者が任意調べで供述、凶器か
産経ニュース / 2024年11月29日 14時0分
-
4【独自】放火疑いの41歳男性『楽しいことするよ』事件発生10分前にSNSに投稿 札幌すすきのガールズバー「ミリオン」爆発火災で犯行予告か
北海道放送 / 2024年11月29日 11時26分
-
5剣道部の同級生に暴行加え死なせた罪 元近大生に懲役3年、執行猶予4年
ABCニュース / 2024年11月29日 17時27分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください