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米はコロナウイルスに勝てるか

Japan In-depth / 2020年2月29日 13時32分

 


また巨額が必要なワクチン開発は補正予算など国民の血税で賄われるのだが、その「成果」であるワクチンの値付けは製薬企業の営利の言い値で高額になる。それをアザー厚生長官が示唆したことで米世論は猛反発した。


 


ワクチンが高額で庶民や低所得層の手が届かなければ、彼らの間の感染が抑制できず、流行を収束させることができないばかりか、国民の税金で製薬会社に火事場泥棒を許すことになる。そのため、トランプ政権は即座に軌道修正を行い、「製薬企業にワクチンを安価で販売させる」と約束する事態に追い込まれた。


 


こうした中、トランプ大統領は補正予算に「必要なだけ支出を行う」と方針を変更し、民主党が要求する85億ドル(約9311億円)レベルに近づけることを示唆している。就任以来、連邦医療予算の削減を重ね、CDCなどを予算不足に陥らせたトランプ大統領だが、日頃より準備に相当の予算を注入せねば、突然襲う感染症の流行に対処できないことが露呈した形だ。


 


より深層においては、目先のコロナ対応を強化しても、新型肺炎が米国でいったん流行すれば悲惨な結末になる可能性が高い。米国の医療費は日本では想像できないほど高額で、保険商品を購入できない無保険者が2800万人に上る。また摘発を恐れて潜伏する1千万人を超える不法移民は自らの感染を疑っても、気軽に医療を受けることができない。これら追い詰められた人々が、感染の拡大防止や終息を困難にする恐れがある。


 


コントロールが難しいコロナのような感染症は、「貧乏人が無保険なのは自業自得」「不法移民は追い出せ」と“正論”を主張する間にも、構造的な社会矛盾や経済・医療格差によって拡大する。それはもはや、人災である。


 


この面で左派も右派もドグマや“正論”に固執することが多い米国は、困難に対して脆弱性を抱えていると言えよう。もしこうした原因で大流行になれば、党派うんぬんレベルではない、米国の政治や経済の仕組みそのものに対する信頼が失われ、国家としての正当性が問われる可能性を秘める。


 


振り返れば、2006年の米中間選挙で共和党が敗退し、2008年のオバマ前大統領当選へと道をひらいた大きな要因のひとつは、2005年8月のハリケーン・カトリーナへのブッシュ元大統領の対応のまずさであった。コロナウイルスは、トランプ大統領の「ハリケーン・カトリーナ」となるのか。


 


トランプ大統領の2016年当時の選挙参謀のひとりであったジェイソン・ミラー氏は、「(中国の失策により制御不能となった)ウイルスは米国の失敗のせいではないが、米国人が問題解決をしなければならない。それが、米国人が受け入れるべきメッセージだ」と述べた。この責任感こそが「もし」ではなく「いつ」の備えを可能にし、コロナを人災にしない基本的な心構えであるように思われる。


 


トップ写真)緊急事態宣言を行う、ロンドン・ブリードサンフランシスコ市長 2020年2月26日


出典)@SFDPH


 

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