変わる世界の中国を見る視線
Japan In-depth / 2020年3月13日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・もたらされた「中国に関する変化」と「グローバル化に関する変化」
・孤立化する中国。軍事費も相対的に減少し、中国は弱化。
・米主導の脱中国の動きは加速。生産活動は国内回帰へ。
全世界に衝撃波を広げた中国発の新型コロナウイルス感染症は世界をどう変えていくのか、あるいはもうすでになにを変えたのかーーアメリカではこの点をめぐる議論が活発となってきた。
アメリカでは中国の武漢での感染の始まりから中国政府の情報の隠蔽を非難して、独裁政権の独特の体質とウイルスの拡散との因果関係などへの批判的な分析も盛んだったが、そのアメリカがいまでは同じウイルスの感染を本格的に受けることとなった。
だがいずれにしてもこのウイルス感染が国際関係をどう変えるかという議論は盛んである。私のいまいる首都ワシントンの国政の場ではとくにその論議に熱がこめられている。その議論の概略を報告しよう。
まず結論を先に述べるならば、最も頻繁に指摘される変化は少なくとも二つある。
第一は中国に関する変化である。
第二はグローバリゼーションに関する変化である。
ちなみにアメリカ側ではこのウイルスを「武漢コロナウイルス」と呼ぶメディアや学者たちも増えてきた。トランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官が公式の場で「これはあくまで武漢コロナウイルスなのだ」と強調したこともその実例である。
▲写真 ポンペオ国務長官は「武漢コロナウイルス」と表現。 出典: The White House flickr
いまや全世界に悪影響を広げるウイルス感染症がそもそも中国の武漢で発生し、それまではそんなウイルスのまったくなかった他の諸国へ広がったという基本構図は呼称の面でも明確にしておくべきだという思考からの呼称である。
さて第一の中国についての変化をもう少し詳しく説明しよう。その変化も大きく分けて、二種類ある。
一番目は中国自体の弱化である。
武漢市の全面閉鎖に象徴される社会機能の麻痺により当然、経済は落ち込む。その結果、軍事に投入される国家資源も相対的に減ることになる。なにしろ国民多数の国内での移動や就業自体が大幅に制限されたのだから、総合的な国力が削られるのは自明である。
アメリカ側ではこの点、スタンフォード大学フーバー研究所のアジア問題の権威マイケル・オースリン研究員が「この感染症拡大は習近平政権への中国内部での非難や不満を激しく広げた」と指摘していた。
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