米から学ぶ新型ウイルス対策
Japan In-depth / 2020年4月12日 18時0分
植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)
「植木安弘のグローバルイシュー考察」
【まとめ】
・日本では非常事態宣言の適用地域と業種が不十分である。
・検査キットの不足、医療体制の充実等に民間が関与すべき。
・一般市民の意識、また政治のリーダーシップが問われている。
ニューヨークを中心に米国の新型ウイルス対策の正と負の側面を見てきたが、日本の現在の対策を見ていると米国を含めた諸外国の教訓をまだ十分に学んでいないと思われる。
1.非常事態宣言の部分的適用
政府の非常事態宣言は大都市を中心に7つの都府県に適用されたが、名古屋や京都など感染が拡大している都市が外された。現在これらの都市が非常事態宣言の適用を政府に要請しているが、適用範囲に加えられたとしても、それで感染が収まる状況にはない。
日本はカリフォルニア州のサイズであり、交通網は全国に渡っているため、人の移動を全て制限することは出来ない。非常事態宣言は全国に適用すべきであろう。
▲写真 緊急事態宣言の対象区域への追加に関する要望を受け取る大村知事 出典:大村知事Twitter
2.宣言適用除外の業種
米国で「ロックダウン」が適用されている中でも、必要不可欠な業種は行動制限から外されている。スーパーやコンビニなどの食料小売り店、テイクアウトや配達可能なレストランの営業、公共交通機関、政府や医療機関や薬局、警察などの安全確保の機関、金融機関、ガソリンスタンド、電力や燃料確保に必要な業種などである。
しかし、東京都が4月10日に発表した生活インフラに必要として発表した業種の中で、例えば、理髪室や美容室、飲食店や喫茶店など店内で食事ができるところは営業が認められている。人の近接接触が避けられないため、米国でも一時は6フィート(1メートル80センチ)の距離を設けて営業しているところもあったが、結局閉鎖に持ち込まれた。日本では小規模経営者が多いため、経営困難への配慮をしたものと思われるが、これでは感染拡大を止めることは出来ない。休業補償で対処する他ない。
3.検査キット
米国の感染拡大の一つの大きな原因は、検査キットの不足だった。米国疫病対策予防センター(CDC)が独自に開発した検査キットが不正確でこれを修正するのに一か月ほどかかった。さらに、当初政府の限られたラボでの検査だけだったため、時間がかかる上に、民間施設にある多くの医療機関が活用されなかった。
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