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人類と感染症11 感染症の原風景は「農耕生活」

Japan In-depth / 2020年4月27日 7時0分

人類と感染症11 感染症の原風景は「農耕生活」


出町譲(経済ジャーナリスト・作家)


【まとめ】


・「農耕生活」が人口増をもたらし、感染症を引き起こした。


・家畜を飼い集落での生活は、感染症まん延の絶好の舞台。


・自力で増えないウイルスは生き残るため、動物に入り込む。


 


新型コロナウイルスとの先の見えない戦いはこの先どうなるのか。どこで終息し、どんな世界が待ち受けているのか。皆目見当がつかない。私はその手掛かりを得ようと、歴史を探ってきた。真っ暗中、少しでも光を照らしたい。今回は1万年前の感染症の原風景を探ってみた。大事なキーワードが浮かび上がる。「農耕生活」だ。


人類はもともと、狩猟生活を送っていた。木の実やキノコを採集し、シカやウサギをとっていた。場所を転々とする気ままな生活だった。移動が多いだけに、一緒に生活する集団は少人数だった。そのころは、感染症に脅かされるリスクも小さかった。当時の状況は、ベストセラー、『サピエンス全史』(河出書房)に詳しく描かれている。


「カリスマ的なリーダーの先導によって、ときおり縄張りの外に出て新しい土地を模索した。こうした放浪は、世界各地への人類の拡散の原動力だった」(同書、上 P68)。


狩猟民族は、どの食べ物に栄養があるのか、どれを食べると具合が悪くなるのか、などを知っていた。



▲写真 狩猟の実践を示す木炭画 出典:Zeynel Cebeci


それが劇的に変わるのは、およそ1万年前だ。人類が農耕生活と始めたのだ。一カ所に定住し、村ができた。


農耕生活は中東で始まり、拡大した。小麦は、1万年前ただの野生の草で中東の狭い範囲だけで作られていたのが、農耕生活でそれが一気に世界に広まった。人類は、朝から晩まで小麦の育成に時間を使った。


「人間は日の出から日の入りまで、種を蒔き、作物に水をやり、雑草を抜き、青々とした草地にヒツジを連れていった」(同書、P104)。


放浪生活をやめたため、女性は毎年、出産できるようになった。畑では一人でも多くの働き手が必要だった。人口が急ピッチで増えた。狩猟生活では考えられないスピードだ。人口が増えれば、畑を広げなければならない。当然、人類の排泄物も増える。それに目をつけたのは、ウイルスや細菌だ。人類の体の中に入って、感染症を引き起こした。


そのころ、もう一つ革命的な出来事が起きる。人類は、次々に野生動物を家畜にした。牛、馬、羊、ラクダ、鶏などだ。人類の配下に収められた。肉や生乳、卵などの食用のほか、羊毛や皮革、さらには労働力ともなった。


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