1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

新型コロナの切り札「抗体検査」

Japan In-depth / 2020年4月30日 11時46分

特記すべきは英国の方針だ。最近になって、約1,000世帯を対象に毎月採血をして、新型コロナウイルスの抗体の保有者がどのように推移するか調べる臨床研究が始まった。


これは英国が「集団免疫戦略」を採っているからだ。集団免疫とは住民の多くが軽症あるいは無症状で病原体に感染し、免疫をもつことで、その地域に再び病原体が侵入しても、彼らが盾となって大流行を防ぐという戦略だ。


免疫を持たない高齢者、乳幼児、あるいはがん患者のような免疫抑制患者がいても、彼らが盾となって感染せずに守られることになる。太古の昔から、人類はインフルエンザや麻疹など多くの感染症をこの方法で克復してきた。ちなみに、このことを人為的に行うのがワクチンだ。ワクチンが開発されなければ、集団免疫を獲得する以外には感染症は克復できない。



▲画像 集団免疫イメージ(黄が抗体保有者)出典: flickr; AJC1


集団免疫を目指すのは感染対策としては合理的で、当初、英国、ドイツ、オランダ、スウェーデンなどが、この戦略を採ろうとした。


ところが、3月半ば以降、欧州では新型コロナウイルスの感染が急拡大した。しかも致死率はフランス18.5%、英国13.6%、イタリア13.5%、スペイン11.2%、ドイツ3.7%と、ドイツを除き高い(4月28日現在)。季節性インフルエンザ(0.1%)や東アジア(日本2.6%、湖北省以外の中国の致死率0.8%、韓国2.3%)とは比べものにならなかった。


集団免疫対策は数年にわたる息の長い施策だ。反対論も出てくる。欧米では「集団免疫策は人殺し政策だ」「人命を尊重せず倫理的に問題だ」「国民にロシアンルーレットを強いている」という批判が噴出し、英国は集団免疫政策を打ち出した5日後には方針転換に追い込まれた。現在、ロックダウン中だ。スウェーデンを除き、方針を転換した。現在も日常生活を継続しているのはスウェーデンだけだ。


このあたり、田中宇氏の『集団免疫でウイルス危機を乗り越える』に詳しく書かれている。ご興味のある方は一読をお奨めしたい。


ただ、英国は集団免疫戦略を完全に捨てたわけではなかった。それが前出の抗体検査だ。彼らは抗体を保有していれば、ある程度の防御力があるという前提に立ち、大規模な抗体検査を準備している。


抗体陽性者は職場復帰が可能になり、経済活動が再開できる。医療現場では、感染リスクが低いため、重要な戦力となる可能性が高い。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください