比でイスラム行事狙ったテロ
Japan In-depth / 2020年5月27日 18時0分
大塚智彦(フリージャーナリスト)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
【まとめ】
・断食明けに南部でテロ相次ぐ。子供や元ジャーナリストが犠牲に。
・政府がコロナ対策で手一杯の隙を狙ったイスラム過激派の犯行か。
・見えない「コロナ」と「テロ」との闘い強いられるドゥテルテ政権。
フィリピン南部ミンダナオ島でイスラム教の重要行事「断食明けの大祭」を祝う席に5月24日に砲弾が撃ち込まれて子供2人が死亡、13人が負傷するテロ事件が起きた。また同島の別の町では元ジャーナリストの市長秘書が食事中に正体不明の男に銃撃されて死亡した。
いずれの事件もミンダナオ島を活動拠点とするイスラム教過激組織の犯行とみられておりフィリピン治安当局は砲撃、襲撃犯の捜索を続けている。
ドゥテルテ政権が新型コロナウイルスの感染拡大阻止に集中している時期に、それもイスラム教の重要行事である「レバラン」のタイミングを狙ったテロ、襲撃事件だけにミンダナオ島の軍や警察も不意をつかれた形となっており、同地域ではイスラム武装組織による脅威が依然として「今そこにある危機」として存在することを国民に改めて印象付ける結果となった。
■ テレビ見ていた兄弟死亡
米政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」の系列ネットメディアで東南アジアに人権ネットワークを持つ「ブナルニュース」が25日に伝えたところによると、事件があったのは、ミンダナオ島中部バンサロモ自治地域にあるマギンダナオ州ダトゥ・サウジ・アンパトゥアン村。イスラム教徒が約1カ月の断食が23日に終わり、24日午後に民家に集まって断食明けを祝う行事「レバラン」を行っていたところ、迫撃砲とみられる砲弾が着弾し爆発した。
▲写真 マギンダナオ州ダトゥ・サウジ・アンパトゥアン村の交差点(2018年11月) 出典:Marwan Khan
地元警察などによると、この爆発でテレビを見ていた10歳の少年と7歳のその妹が搬送された病院で死亡が確認されたほか、近くにいた親族、知人ら13人が重軽傷を負った。負傷者の中には死亡した兄妹の母親も含まれているという。
地元治安当局によると、使用されたのは81ミリ迫撃砲とみられ、同州で活動するイスラム過激組織である「バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)」がよく使用する武器であることからBIFFによるテロ攻撃との見方が強まっている。
さらに砲撃前日の23日には、同村周辺に展開する陸軍の4つの分遣隊基地に対する攻撃もあったという。陸軍側に負傷者の報告はないものの軍関係者は「イスラム教の重要行事の日にイスラム組織の攻撃はないだろうと油断していて不意をつかれた形となってしまった」と地元メディアなどに話しているという。
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