中国海軍力は米海軍力超えず
Japan In-depth / 2020年6月3日 7時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・中国海軍力は米海軍力超えず。
・軍艦の高価格化、老朽更新の発生、コーベット戦略への転換で中国海軍成長鈍化。
・分布式殺傷導入とマハン戦略回帰で米海軍再成長。
米海軍は対中優勢を喪失しつつある。30年前には中国海軍は取るに足らない敵であった。正面戦力で337隻対6隻と圧倒していた。その差は今では199隻対134隻まで縮まった。米国は艦隊戦力整備をなおざりにしてきた。そしてその間に中国は外洋艦隊建設に邁進した。その結果だ。
「米中海軍力はいずれ逆転する」とも予想されている。もちろん「中国が世界を圧倒する」ほどの主張は少ない。ただ「米中対立の正面である東アジアでは逆転する」見立ては珍しくない。
この予想は正しいのだろうか?
誤りである。中国海軍は米海軍を超えない。逆に米海軍は巻き返し中国海軍に再び有利に立つからだ。以下、その理由を3つにわけて説明する。
▲図 戦力比の内訳 出典:筆者作成
■ 中国建造数の鈍化
第1の理由は中国海軍力の成長鈍化である。中国海軍は軍艦の高価格化と老朽更新の2つの問題を抱えている。そのため今後の成長は頭打ちとなる。
まずは高価格化の問題がある。軍艦の高級化により建造費も高騰する。そのため従来どおりの数は新造できなくなる。そのような問題である。
最新の055型駆逐艦はそうなる。排水量1万2000トン超と従来の6000トン級の2倍に増加した。しかもイージスに相当する中華神盾艦である。そのセンサや武装も従来の神盾艦より充実している。
この055型は大量建造できるだろうか?
まずは無理だ。建造費は相当に高額化している。価格は従来神盾艦である052C/D型の少なくとも1.5倍から2倍となる。在来艦の052B以前と比較すればまずは5倍だ。(*1)そのため052C/D型のように40隻規模の建造は難しい。
また、中国海軍は今後は老朽更新の問題にも直面する。90年代以降に大量建造した外洋艦が大量退役するためだ。053H3型はすでにその時期にある。現代型、051B/C型、052/B型、キロ型も退役は遠くはない。
これも艦艇数増加を抑制する。軍艦を10隻建造しても10隻退役すれば差し引きゼロとなる。そのような時期が来るのである。つまり艦隊戦力増勢にはそれ以上を建造しなければならない。例えば15隻を作る必要がある。そしてその場合でも純増5隻にしかならない。
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