拉致「棄民OK」から脱却を
Japan In-depth / 2020年6月8日 11時0分
このようにして北朝鮮は、日本の領土において主権を侵害しながら、白昼堂々と数十人以上の日本人を誘拐していった。これを防げなかったのは、1947年に成立した日本国憲法が、主権者たる国民を護るための戦争を禁止するという、お話にならないレベルの欠陥法典であったからだ。
戦前の軍部が交戦権を悪用したという事実を以って、一番大切な国民を護ることさえ「戦争放棄」の第9条を通して放棄するという、およそ憲法としての正統性を持ち得ない代物であった。そのようにして日本は去勢され、外国に軍隊を送れないことで、近隣国に舐められている。
だが、主権者を守れない政体は存在意義を持てない。そのような正統性のない枠組みが70年以上も継続できたのは、日本を保護国化することで去勢状態に置いておきたい、宗主国たる米国の意思と、国民保護に関心のない歴代政権の怠慢があったからだ。
また、拉致被害者の救出を訴える日本や拉致被害者家族に対し、ブッシュ(息子)やトランプなど歴代の米政権は、米朝交渉で拉致問題を利用できる時には利用し倒し、結局は裏切って対北朝鮮融和に走り、日本はその都度はしごを外されてきた。
しかし、米国が衰退を始め、北朝鮮の核兵器保有の容認と、北朝鮮主導による南北統一や在韓米軍撤退へと傾きつつある今、そして覇権国家の中国が南シナ海や東シナ海、さらには台湾や尖閣諸島にまで支配を広げる野心を隠さない中で、日本は本気で国民保護を自前で行う意思表示を行う必要がある。国として当たり前過ぎることに向き合うのだ。
国民保護の意思を統一朝鮮・中国・ロシア・米国に明確に示し、国民救出のための対外派遣も可能な「国民保護軍」を創設する憲法改正を行い、既存の日米軍事同盟をより平等なものに改定しなければ、日本は生き残れない。
核武装を完成させた北朝鮮との交戦は、現段階では現実的でない。だが、国民を護る強い決意と、朝鮮半島有事の際にめぐみさんら拉致被害者を含む日本国民救出作戦を実行できる意思と能力は、統一朝鮮や中国に対する最大の抑止力になる。もう二度と、日本人の命には手出しはさせない。そう決意せねば、われわれの命が脅かされる。その決心をするために参考になるのが、滋さんの生き様だ。
■ 横田滋さんに学ぶべき愛情と忍耐
滋さんは、本当に愛情深い方であった。娘を慈しむ眼差しは、子供時代のめぐみさんを撮った写真によく表れている。彼女が拉致され、北朝鮮に抑留されていることが判明しても、世間は拉致被害者家族に冷たかった。それでも諦めずに署名運動のうねりを起こし、国民保護に腰の重い日本政府を動かし、不可能を可能とされた。決して弁舌ではない滋さんは、娘の救出のために弁舌になられたのである。
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