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仏版ジョージ・フロイド事件とは

Japan In-depth / 2020年6月8日 18時0分

アダマ・トラオレさんの家族がフランステレビのTF1に出演した際には、インタヴュアーに「身分証明書を持ってなかったのが悪かったのではないですか」「どうして逃げたのですか。逃げるから悪いんでしょう」と問い詰められることもあった。しかし、家族は、「まず、黒人じゃなければ身分証明書を求められることもない。彼は逃げたのではなく、自転車に乗っていたら警察が追いかけたのだ」と返答していた。


実際、その言葉の通りだとTF1の別の番組で示された。2017年に行われた権利擁護機関(Défenseur  des  droits)の調査によれば、有色人種が道端で職務質問されるのは、その他の人種の20倍であり、2007~2008年に行われたOSFの調査では、パリの北駅での有色人種の利用率は29%にしかすぎないのにもかかわらず、職務尋問された人の割合では89%を占めたのだ。


さらに、BMFTVでは警察官の内部告発により警察官の一部の同僚が、差別用語を使い有色人種を人間扱いしていなかった事実などが流され、短期間でメディアの論調も変わっていったのだ。


そういった流れの末、6月6日には、フランスでも多くのメディアで「人種差別と警察官の暴力に抗議するデモ」と題するようになっていった。


 


■ 録画されてなかったという不運


アダマ・トラオレさんの事件は痛ましいことだが、さらに不運だったことがある。それは、当時は現在のように一般人による動画撮影が頻繁に行われてなかったことだ。アメリカで、白人警官が黒人男性のジョージ・フロイドさんの首を約9分間にわたり膝で押さえつけ、フロイドさんが息ができないとあえぐ様子は、一般の人によって録画されていたため誰もが真実を知ることができた。その結果、罪が問われるべき人物が誰なのかをはっきりと確認できたのだ。しかし、アダマ・トラオレさんの事件では、その動画もない。家族の主張、もしくは、警察側の主張のどちらが真実なのかというはっきり目に見える証拠もなく、家族側の話に誰も耳をかさなければそれで終わっていたかもしれない事件である。


しかし、家族は粘りづよく戦ってきており、今回家族の要請で医療報告が出されて、2日にデモも行われた。その結果、なんと次の日に担当の裁判官から通知がきたのだ。アダマ・トラオレさんを逮捕した警察のやり方に疑問を投げかけた形だ。7月にこれまでに聞き取りをしていない2人の証人の意見を聞きたいとしている。


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