尖閣問題、勝っても負けてもダメ
Japan In-depth / 2020年6月8日 23時0分
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・尖閣問題での日本勝利は危険。中国に対日戦を決意させるリスク伴う。
・日本敗北も危険。日本から対中戦を引き起こすリスクを伴う。
・現状維持しかない。そのために両国政府による国民感情の制御が必要。
日中は尖閣諸島で対峙状態にある。両国とも「島は自国領である」と主張しており領土問題となっているためだ。だから現地では日本海保と中国海警がにらみ合いをしている。
この争いは勝ってもいけないが負けてもいけない。日本は勝利してはならない。中国海警を追い出し尖閣を支配してはならない。同様に日本は敗北してもならない。海保が追い出されて尖閣を中国支配下に渡してもいけない。
それはなぜか?
現状変更は戦争事態を引き起こしかねないためだ。尖閣で日本が勝てば中国はあらゆる手段でその奪回を試みる。日本が負けても同様である。日本もあらゆる手段で奪回を試みる。その際には直接的な武力行使やさらには開戦も辞さない。そのような事態まで発展してしまうのだ。
■ 中国の国民世論は沸騰する
日本は尖閣問題で勝利してはならない。
これは「もし勝てばどうなるだろうか?」を考えればよい。尖閣から日本が中国海警を追い出す。そして尖閣諸島に自由に上陸し日章旗を掲げる。その状況に至ればどうなるか。
中国は何があっても奪回しようとする。「日本との戦いも辞さない。そのためにはいくら血を流してもよい」国民も政府も指導者もそのような選択をする。
まず中国の国民世論は奪回を要求する。中国国民は「釣魚島は中国領土」と信じて疑わない。その領土を奪われれば世論は沸騰する。国民は指導部や政府の失敗を非難し奪回しろと要求する。
党や政府も奪回の立場に追い込まれる。領土を外国に奪われただけでも非難される。その上で奪回も試みなければ政府機構は存在価値そのものが否定される。政権は打倒されるのだ。
指導者も奪回を選択する。何もしなければ「領土喪失を許した」と歴史に汚名を残す。死後の名声を喪うのだ。そのため仮に勝てなくとも戦いを選ぶ。そうすれば少なくとも名誉は保たれるのである。(*1)
つまり中国は奪回を選ぶ。日本との全面戦争も辞さない。戦争拡大による国際社会での立場悪化や経済的不利益といった採算は度外視する。対米戦に発展する可能性があっても奪回する。
▲写真 日本が尖閣諸島問題で勝利すると 出典:VOA
日本の尖閣勝利は日中の全面対決を引き起こすのだ。
この記事に関連するニュース
-
日本の領海でウロウロするしかできない…元海上保安庁長官が明かす「中国船が日本漁船に手を出せない理由」【2024上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年9月1日 8時15分
-
中国軍機による領空侵犯の衝撃 7月の対抗措置か…「沿岸諸島は影響が大きい」と指摘される背景
東スポWEB / 2024年8月27日 6時5分
-
NHK ラジオ国際放送問題でテレビで謝罪放送「極めて深刻な事態」中国人キャスターの過去の発言を調査へ
よろず~ニュース / 2024年8月26日 21時35分
-
日中関係の再考 その7 中国の強大な軍事脅威
Japan In-depth / 2024年8月26日 11時0分
-
尖閣諸島周辺に中国船 29日連続、海保が確認
共同通信 / 2024年8月25日 10時28分
ランキング
-
1「ウーバーイーツ」配達中の軽貨物車、自転車の女性はね重傷負わせ走り去った疑い…運転の男逮捕
読売新聞 / 2024年9月22日 10時20分
-
2「資さんうどん」を買収したすかいらーくHD。“丸亀一強”のうどん市場を変える可能性も
日刊SPA! / 2024年9月22日 8時53分
-
3安倍晋三元首相と旧統一教会の「面談」スクープ 鈴木エイト氏が説く“追及のカギ”「注目すべきは集合写真に萩生田光一氏と岸信夫氏が写っていたこと」
NEWSポストセブン / 2024年9月22日 7時15分
-
4路上で腹部を何度も…殺人未遂容疑で逮捕された34歳女性のヤバすぎる“近所付き合い”
週刊女性PRIME / 2024年9月22日 6時0分
-
5能登の特別警報を警報に切り替え 輪島、珠洲で観測史上1位の雨量
共同通信 / 2024年9月22日 10時50分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください