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イージス・アショア整備の矛盾

Japan In-depth / 2020年6月23日 23時0分

イージス・アショア整備の矛盾


文谷数重(軍事専門誌ライター)


【まとめ】


・本来イージス・アショアは国民が安心するための政治兵器であった。


・だが整備計画では完璧な迎撃を目指してしまった。


・整備主旨と整備計画の矛盾により問題を生じた結果、計画は頓挫。


 


防衛省はイージス・アショアの整備中断を発表した。ブースター落下問題が解決できないから秋田・山口での建設工事を中止する。防衛省はそう説明している。


本当の理由は計画の八方塞がりである。アショア整備では配置場所や予算超過、完成時期の問題も積み上がっていた。その結果としてにっちもさっちも行かなくなり中止に至ったのだ。


なぜ計画は頓挫したのか?


整備主旨を明示しなかったためだ。本来は国民の不安解消のための政治兵器である。だが防衛省側はその意図を汲み取らず馬鹿正直に完璧な迎撃を目指してしまった。この整備主旨と整備計画の矛盾により計画は中止に至ったのである。



▲写真 秋田県に配置するとしても市街地に作る必要はなかった。空自加茂のレーダーサイトのうち、遠距離探知用レーダをアショアに置き換える選択肢もあったはずである。図はグーグルマップのキャプチャーであり筆者が矢印等をいれた。


 


■ イージス・アショアは政治兵器


イージス・アショアの整備目的は何か?


日本国民の不安解消である。


国民は北朝鮮の弾道弾に不安を抱いていた。地理上の問題から試射方向は全て日本に向いていた。また一部の弾道弾は日本の上空を通過した。そしてその脅威を政権は煽った。その結果である。


それにより社会にも悪影響も生じていた。試射のたびにJアラートが発令された。その結果、屋内避難や鉄道等の運行停止といった過剰反応が引き起こされた。また朝鮮半島にルーツをもつ人達への差別迫害も引き起こされた。


アショア整備の目的はその払拭である。従来のイージス艦やPAC-3に新しいミサイル防衛が加わる。それにより「弾道弾迎撃は確実になった」と国民に信じてもらうための政治兵器として選択されたのだ。


 


■ 完全迎撃を目指した防衛省


だが、政府はこの主旨を明確にしないまま整備を進めてしまった。


整備を命じられた防衛省側は本来の整備主旨を汲めなかった。国民不安の払拭といった目的は漠然と理解されていたはずだ。だが明文化された指示ではない。そのため主旨を計画に反映できなかったのだ。


結果、馬鹿正直に北朝鮮弾道弾の実迎撃を最優先してしまった。


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