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差別の象徴消しても暴力はなくせない(後編)変わらぬ暴虐の現実

Japan In-depth / 2020年6月24日 18時0分


▲写真 マイケル・ブラウン射殺の現場 出典:Wikimedia Commons; Eapen Thampy


黒人女性の歴史家であるセリリアン・グリーン氏は、「こうした(暴行)事件は全て、黒い肌への恐れという感情でつながっている」「米国では、長いこと黒人殺しの権限が白人に委ねられていた」「この国には、憎悪が骨の髄まで染み込んでおり、それが黒人殺しを助長している」と解説する。この恐れに駆られた暴力こそが、「白人性」の根幹的な要素になっているというのだ。


 


米憲法が暴力や迫害を奨励する逆説


一方、黒人女性の映画監督エイヴァ・デュヴァネイ氏によるネットフリックスのドキュメンタリー『13th―憲法修正第13条―』では、奴隷制度そのものが解体されたにもかかわらず、人種差別のシステムが姿を変え、多くの黒人を収監する現在の獄産複合体(刑務所産業複合体)へとつながっていくことがエビデンスを通して示されている。



▲写真 エイヴァ・デュヴァネイ氏 出典:Flickr; Peabody Awards


高らかに「隷属からの自由」を謳い、黒人を奴隷制から解放したはずの憲法修正第13条には、「ただし犯罪者はその限りにあらず」という例外規定が設けられており、黒人の抑圧継続を正当化する根拠、さらにはそうした構造を支える警察暴力の根源になっているとの見立てだ。


また、権力を法で拘束するという英米法系の基本的原理である「法の支配」は、民主党支持者が多い地域であれ、共和党支持者の多い地域であれ、実質上「法と秩序」として運用されていることに注意する必要がある。「『法と秩序』は20世紀初頭に南部で『黒人の人々を秩序に従わせる』という意味で使われ始めた、『黒人を規制する』という意味を含んだ隠語だ」とプリンストン大学で米政治史を教えるオマール・ワーソウ助教授が指摘するように、憲法から自治体条例に至るまで米国の法の根幹は、黒人の隷属の恒久化を念頭に置いている。


このシステムは、黒人が幼少の時から大きな口を開けて、彼らが落ちてくるのを待っている。学校は、恵まれない家庭環境のもと不良になった黒人少年を更生させるのではなく、即通報して少年院や監獄に送る。立ち直りの機会が用意されない彼らは、大人の犯罪者になってゆく。学校と監獄は太いパイプラインでつながっており、警察の暴力や殺害など、弾圧と抑圧の長い腕はどこまでも伸びて黒人を捕まえる。


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