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丁寧な説明と乱暴な議論 ポスト・コロナの「勝ち組」メルケル独首相 最終回

Japan In-depth / 2020年7月2日 21時57分

丁寧な説明と乱暴な議論 ポスト・コロナの「勝ち組」メルケル独首相 最終回


林信吾(作家・ジャーナリスト)


「林信吾の西方見聞録」


【まとめ】


・安倍首相は憲法に緊急事態条項を盛り込む必要性を訴える。


・分断国家として再出発した西ドイツは「基本法」が最高法規だった。


・安倍首相の改憲論議は「改憲論議のための改憲論議」に過ぎない。


 


新型コロナ禍への対応をめぐって、麻生太郎副総理が我が国の死亡者数が欧米より格段に少ないことを「民度」という言葉を使って誇ったことは、未だ記憶に新しい。


なんでも海外の友人から、日本における死亡者数の少なさを指摘され、


「お前のところだけ、実は薬を持ってるんじゃないのか」


みたいなことを言われたので、


「我が国は民度が高いから、死亡者数が少ないのだ」


と答えた。相手は絶句していたという。


県外ナンバーの車が煽り運転などの嫌がらせを受けたり、宅配便の配達員が消毒スプレーを吹きかけられたり、果ては医療従事者の子供がイジメにあったりするような国の民度が高いと言われたなら、たしかに相手が言葉を失っても不思議はない……と言いたいところだが、これはたしかに俗耳に入りやすい議論ではある。だから余計に始末が悪い。


シリーズ第1回で、ドイツのメルケル首相が新型コロナ禍への対応を評価されて、支持率をV字回復させていることを紹介した。


彼女はなにしろ理系の博士号を持つ人なので、医学者や病理学者の話を問題なく理解でき、今どのような対策が必要なのか、分かりやすく国民に説明することができた。



▲写真 G7シャルルボワ・サミット時のメルケル首相と安倍首相 出典:首相官邸HP


これに引き換え我が国の副総理は、データの読み方をご存じないようだ。


たしかに欧米に比べて日本の死者数は桁違いに少ないが、アジアに話を限れば、


「人口10万人当たりの死亡者数」


で日本はワースト2位なのである(1位フィリピン)。


中国の場合、発生源であったにもかかわらず、人口10万人あたりの死亡者が日本より少ないことになるが、なにぶん分母(総人口)が桁違いなので、単純な比較はできないという面は、もちろんある。


しかし、そのことを割り引いても、アジアと欧米(ラテンアメリカを含む)を比較した場合、アジアにおいて死亡率がかなり低いことは明確な事実で、これは衛生環境や、私自身も以前に書いたことではあるが、


「握手してハグしてキスしてという文化がないので、濃厚接触と言っても程度問題」


ということだけでは説明がつかない。


なにしろ「新型」コロナウィルスで、その感染のメカニズムも未だ解明されていない部分が多い。アジア人の死亡率が比較的低いのは、なにか遺伝的な要素があるのではないか、と考える研究者も見受けられるようになったと聞く。


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