仏、マスク着用求め殺される
Japan In-depth / 2020年7月12日 19時0分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
【まとめ】
・仏、マスク着用を求めたバス運転手が乗客に暴行され死亡。
・バスの運転手は危険な職業。安全確保対策が不十分。
・内務大臣は安易な暴力事件を「仏社会の本質的な問題」と認識。
「なぜ、規則のマスクをするよういっただけで、彼が殺されなければいけなかったのか?」
そんな言葉でニュースは始まった。
フランスでマスク着用を巡り、痛ましい事件がおきたのである。7月5日、19時15分、その事件は起こった。バスの運転手フィリップ・モンギヨさん(59歳)がマスクを着用していない利用者数人にマスク着用を求めたところ、この利用者たちから暴行を受けたのだ。その後、モンギヨさんは病院に搬送されたものの、次の日には脳死と診断され、ついには回復することなく10日に亡くなった。
■ 事件の概要
事件が起こった場所はフランス南西部バイヨンヌという小さな町だ。週末も終わろうとしていた日曜日の出来事であった。モンギヨさんは、その日、バスで帰ってきた18歳の自分の娘に仕事中に偶然であっている。そこで「これが今日の最後の仕事だよ。じゃあ後で」と声をかけて、いつものようにその日最後のルートを走り始めたのだ。しかしその時には、この仕事が今日どころか生涯で最後の仕事となり、その後、2度と生きて自宅に帰れなくなるとは夢にも思っていなかっただろう。あの時、娘さんにかけた言葉が家族への最後の言葉となったのだ。
バスと一言いってもモンギヨさんが運転していたバスは、従来の運転手の横にある乗車口から利用者が乗り込みお金を払うという小さなバスではない。トラムバスという、いわゆる路面電車をバスにしたような形態のバスだ。車両は2台連結されており全長18mで、全部で4カ所の乗り降り口がある。バイヨンヌ駅を過ぎたあと、後方の入り口から利用者が乗り込んできた。入口が多いため無銭乗車も多く、その時は後方まで行って乗車券をもっているかの確認をおこなっていた。しかしその時すでに、車内にはマスクをしていない3人の乗客が座っており、乗車券のチェックついでに、その3人にもマスクをするように注意をしたのだ。バイヨンヌがある地域は、フランスの中でも特に新型コロナウイルスの感染者が少なく無防備な人も多いが、フランス全体で公共交通機関内でのマスク着用が義務付けられているため、マスク着用を求めることは当然のことだ。
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