イラクのクウェート侵攻30年と日本の屈辱
Japan In-depth / 2020年8月8日 23時0分
写真)米軍の「砂漠の嵐」作戦の攻撃を受けたイラク軍の戦車などの残骸 1991年4月18日
出典)U.S.Airforce Photo by TECH. SGT. JOE COLEMAN
アメリカはこの間、ドイツ統一という巨大な課題をもこなしていた。東西冷戦後の新秩序を築くことに成功したのだ。やはり「アメリカの力による平和」が基盤だった。
その後、ブッシュ政権は東西冷戦をもアメリカの完全勝利で終わらせることに成功した。
ソ連共産党政権は1991年12月に崩壊し、東西冷戦が完全に終結したのだった。
この間、日本は国際協力への異端を発揮した。
アメリカの政府も議会も多国籍軍への日本の参加を切望した。日本はペルシャ湾岸からの石油に依存する度合いが飛びぬけて高かった。日本の船舶多数がクウェート近くで脅威にさらされていた。しかも日本はアメリカの同盟国だった。だからこの際、日本もイラクの侵略を抑える多国籍軍になんらかの要員を派遣してほしいという米側の期待だった。
ブッシュ大統領は海部俊樹首相に「日本が多国籍軍に協力するか否かは今後の日本が責任ある大国になるかどうかの分岐点になる」と警告した。
写真)海部俊樹元首相
出典)首相官邸
だが日本は軍事の効用を否定する憲法を理由に一切の人的寄与を拒む結果となった。130億ドルの資金だけを提供したが、「小切手外交」と揶揄された。
私自身がそれまで日本には好意的な言葉だけを聞いていたジョン・マケイン上院議員までが「自国を守る国際安全保障のためにも危険は一切、冒さないという日本の態度は全世界の軽蔑と米国の敵対を買いかねない」とまで断言したのにはショックを受けたのだった。
中東も欧州もこの第一次湾岸戦争以来、一応の安定が続いた。アメリカは唯一の超大国として平和の保持の責任を担った。だがこの世界の平和と安定も、それからちょうど10年後の2001年9月には衝撃的な形で崩されることとなる。
アメリカに対する同時多発テロだった。中東を拠点とするイスラム過激派の犯行だった。
そしてそのテロはやがては新たな湾岸戦争へとエスカレートしていった。
こんな世界の近代史を自分自身の体験とともにこの8月はじめにはつい回想させられることとなった。
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