バイデン陣営勝利は時期尚早
Japan In-depth / 2020年8月18日 19時50分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
宮家邦彦の外交・安保カレンダー【速報版】 2020#34
2020年8月17-23日
【まとめ】
・ハリス氏選択でバイデン陣営の勝利が近づいたとの即断まだ早い。
・ベラルーシで「●●色革命」起きるか。パレスチナ問題の風化進む。
・香港「リンゴ日報」社主逮捕は若い民主化運動家の拘束以上に深刻。
今週も先週に続き、外交安保関係ニュースは豊作だ。最大のニュースは8月11日、民主党ジョー・バイデン候補がカマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に選んだことだろう。ハリス女史の評価については、ワシントンの辰巳由紀さんから送られてくる「デュポン・サークル便り」の番外編に譲ることとし、本稿では深く立ち入らない。
大統領選については今週のJapanTimesと産経新聞にそれぞれ別の視点からコラムを書いたので、詳しくはそちらをご一読願いたい。その上で、敢えて言わせてもらえば、ハリスという選択は確かに歴史的ではあるが、これで民主党のバイデン・ハリス陣営が「勝利に一歩近付いた」などと即断するのは、まだ早いということに尽きる。
確かに考えてみれば、今回の民主党は東海岸の老練な白人男性・中道政治家と西海岸の若手非白人女性・リベラル政治家の組み合わせで、バランス的にも決して悪い選択ではない。しかし、これを迎え撃つトランプ陣営も「エゲツなさ」では決して負けてはいない。今回の選挙が史上稀に見る泥仕合となることだけは間違いなかろう。
筆者は、長く混乱の続いた民主党側が、これでようやくスタートラインに並んだに過ぎないと見ている。例年とは異なり、4年前だけはトランプの勝利を予期できなかった。こうした悔しい思いがあるからこそ、今年は特に慎重になっている。いずれにせよ、これから11月の投票日まで2カ月弱もあるのだから、本当の戦いはこれからだ。
米国以外に目を転じると、やはり国際政治に「夏休み」などはないと痛感する。パンデミックと大統領選で米外交が停滞する中、ベラルーシでは反政府抗議運動が始まり、中東ではパレスチナ問題の風化が進み、香港では民主的政治風土が急速に失われつつある。いずれの場合も米国の対応はお粗末としか言いようがない。
〇 アジア
国家安全維持法施行により香港の「高度の自治」は風前の灯火だ。特に、8月10日の黎智英リンゴ日報社主の逮捕は若い民主化運動家の拘束以上に深刻である。
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