コロナと感染症法の見直し
Japan In-depth / 2020年8月29日 13時13分
厚労省は、二類相当外しを議論する前に、もっとやるべきことがある。それは医師や看護師、介護士などのエッセンシャル・ワーカーにPCR検査の機会を保障することだ。
エッセンシャル・ワーカーとは、社会の営みには欠かせない職種のことで、コロナの流行下でも働いてもらわなければならない。彼らは自らの銭もうけのために働いている訳でなく、社会のために自己犠牲を払っているのだ。通常の職業と同列に論じるわけにはいかない。
東京都世田谷区は保育士や介護施設職員など約2万人を対象に、一斉にPCR検査を実施し、その費用約4億円を公費で支出する方針を決めた。複数人の検体を混ぜ合わせて検査し、陰性の場合は全員陰性と判断する「プール方式」を採用する。一日の検査能力は約3000件という。
▲写真 イメージ 出典:Pikist
これこそ、厚労省がやるべきことだ。繰り返すが、エッセンシャル・ワーカーは、自らの経済的利益のためだけに働いている訳ではない。保育士や介護士が一斉に休めば、子どもや年老いた親を持つ医師や看護師も働けなくなる。コロナ対策は行き詰まる。
エッセンシャル・ワーカーには、この他に消防士、警察官、さらに公務員なども含まれる。多くの先進国では、一般人と別枠で対応されている。PCR検査を受ける権利も保障されるべきだ。
ところが、日本はそうはなっていない。私が知る限り世界での先進国では例を見ない。なぜそうなのか。それは感染症法で、エッセンシャル・ワーカーに対する検査が規定されていないからだ。現行の感染症法でPCR検査が規定されているのは、感染者、感染疑い、および濃厚接触者だけだ。第一波で保健所が濃厚接触者への対応に忙殺される一方、発熱した一般市民には「37.5度4日間」という基準を作って検査を抑制したのは、感染症法に準拠して対応したからだ。
エッセンシャル・ワーカーには検査を受ける権利があるはずだ。ところが、日本は逆だ。厚労省と専門家が率先して、検査を絞っている。7月16日、コロナ感染症対策分科会は「無症状の人を公費で検査しない」と取りまとめた。
厚労省のクラスター研究班のメンバーを務める医学部教授も、世田谷区の対応に対し、フェイスブックで「まあ自分の市長(原文ママ)がこんなことしたら一度は電話するだろうね。おやめなさい」とコメントしている。また、「症状がない人に税金を用いて検査することの意義は少ない」とも記している
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