高知氏自叙伝「生き直す」発売に寄せて その4 新旧の高知東生が抱える葛藤
Japan In-depth / 2020年9月7日 14時30分
田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)
【まとめ】
・高知氏は地元 高知県をこよなく愛し、誇りに思っている。
・地元の友人の感じた芸能界で演じていた「高知東生」とのギャップ。
・怒りや悲しみを力に変える生き方は高知氏を追い込んだ。
高知東生氏は講演活動を始めた頃よく泣いていた。
特に故郷高知に関する出来事やお母様のことを語り始めると、涙ぐむことが多かった。それだけ幼少期から青春期の高知氏の心の中には昇華しきれない思いを抱えていたのだと思う。そして「高知」と芸名を名乗る自分が不名誉な事件を起こしたことで、大切な故郷を傷つけてしまったことを悔いていた。
自叙伝にも詳しく書かれているが、高知氏がTwitterに母が自死した時のことを連続ツイートした際に2.2万のリツイートと16万ものいいねがつき話題となったのでご存知の方も多いかと思うが、お母様が最後に高知氏に残した言葉は「私、綺麗かな?」というものだった。その時、高知氏は「実の息子に何を言ってるんや。気持ち悪い。」と言って高校の寮に帰ってしまったが、車のドアが閉まる際にお母様は泣きながら笑っていたというのだ。
そして高知氏は生涯この時なぜ「綺麗やぞ、お袋」と言わなかったのかと悔やむことになる。
私も、はじめてこの話を聞いた時はなんという切ない最期だったのだと胸が締め付けられる思いがした。
そして高知氏は出会った当初「おふくろは母親よりも女でいたかったんだ。」とよく淋しそうに語っていた。「愛されなかった子供」高知氏は自分で自分のことをそう責めているように思えた。
また高知氏は地元高知県をこよなく愛し、自分が土佐っ子であることを心から誇りに思っている人である。高知氏というと「都会の色男」を想像する方も多いと思うが、実際はもっと素朴で、今でも深い絆で結ばれ、思い出話を楽しそうに熱く語るのは、決まって青春時代をすごした高知での話しなのだ。特にお母様が亡くなって、淋しさと居場所のなさ、そして受け止めきれない現実の中で、はちゃめちゃに暴れる高知氏を受け入れてくれたヤンチャ仲間との友情は、高知氏の大きな支えになっている。
私も、高知氏と仕事をする際には相手がどう出てくるのか?薬物事件をどう思っているのかがわからず身構えてしまうことも多いが、高知県での仕事で御一緒させて頂く時には地元の仲間の方々に守られている空気感にホッとできる。
高知氏と出会って意外性に驚かされることは沢山あったが、最も忘れられない出来事もこの地元高知県にまつわることである。
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